京都市による京都市地域リハビリテーション推進センター、京都市こころの健康増進センター、京都市児童福祉センター(以下、児福)の「合築」が、新しい段階に入った。市は2018年3月、「一体化整備基本計画」(以下、計画)を正式策定。今年度予算に2千万円を計上し、建設予定地(中京区壬生高田町)の埋蔵文化財調査、土壌汚染事前調査およびダイオキシン・アスベスト調査を行うという。
市は福祉の到達点踏まえ
計画策定にあたり協会も参加する京都市の3施設合築方針を考える実行委員会(以下、実行委員会)は3月2日、市民意見募集に応え「意見」を提出。
「意見」は、計画案に書かれた障害者自立支援法の制定過程、同法から現行の障害者総合支援法への移行過程の記述の不十分さを指摘した。
市は自立支援法を「障害者基本法の理念を踏まえ」たものと説明する。だが「差別の禁止」「地域社会における共生」を謳い、国・自治体のリハビリテーションをはじめとした福祉・医療の実施責務を明らかにした基本法に対し、06年施行の自立支援法は掛け離れたものである。そのため応益負担廃止運動が広がり、違憲訴訟提訴、総合支援法へ移行という経緯を辿った。当時、市は全国に先駆け、負担軽減の独自施策〈京都方式〉を実施。これは少なくとも当時、市が自立支援法の問題点を認識し、地方自治体として当事者の福祉を守る立場で動いたことを意味する。基本計画案はそうした経緯や市政の到達点を踏まえた記述となっていない。意見はそれを指摘し、一体化整備計画はゼロベースで見直すこと、児童福祉センターにおける診断と発達検査の待機期間の解消、3施設それぞれの機能強化・拡充を求めた。
「一体化」 方針に正当性はあるか
その後、市は正式に計画策定。これを受け、実行委員会は5月17日、京都市会に「京都市の3施設一体化整備について再検討を求める陳情書」を提出。陳情は、①一体化方針をゼロベースで見直すこと②児福は一体化の対象としないこと③京都市資産有効活用基本方針と一体化の関係性を説明すること―を求めた。
陳情審査は5月24日、市会・教育福祉委員会で行われた。市当局は陳情に対し、一体化方針は市の正式な方針でありゼロから見直すつもりはない。一体化後も「障害」で括るのではなくすべての子どもを対象にした施策を進める。一体化は資産活用を前提としたものではないと説明した。
これに対し山本陽子議員(共)が質疑に立ち、一体化を市が方針化する経緯において、関係者・当事者の声を方針に反映させる機会は2017年の有識者ヒアリングが初めだった。この時点で市はすでに一体化を動かさざる方針としており、あくまで有識者や当事者団体はその前提での意見を求められた。だが市が3施設の一体化(当時は合築と呼称)方針を初めて示したのは15年の「障害保健福祉施策の総合的な推進と児童福祉施策の充実・強化に向けた取組方向」であり、一体化方針自体を直接当事者・市民の声を聴いた上で決定した事実はないのではと指摘した。
これに対し、子ども若者はぐくみ局は「積み重なって、今ここにある」と答弁した。だが市が根拠にあげる13年の「京都市におけるリハビリテーション行政の基本方針」は「3障害一体となった相談・支援」を謳ったに過ぎず、子どもたちの人権・発達保障を担う児福を施設ごと一体化するとした「取組方向」の内容とはかなりの距離がある。手続き論一つとっても議論は全く積み重なってなどいないのではないか。だからこそ実行委員会はゼロベースで見直すことを求めているのである。
保護者らから届けられた声
6月1日、実行委員会は京都市当局との懇談会を実施。協会の他、こどもたちの保育療育をよくする会、京都障害児者の生活と権利を守る連絡会や現場職員が出席した。市からは障害保健福祉推進室の担当者が出席した。懇談ではよくする会が取り組んできた署名「児童福祉センターとしての存続・発展を」1302筆を提出し、保護者や療育現場の声を受け止めるよう求めた。さらに実行委員会からは各保健福祉センターを利用した発達検査の実施等、具体的改善策も提起し、より実践的な立場で引き続き市への要請活動を進めることを表明した。