広場 老後不安社会からの転換  PDF

政策部員 礒部 博子

 先日、「高齢者ケア保障の実現へ」という題のシンポジウムが、佛教大学社会福祉学部教授の岡﨑祐司氏らを招いて開催されました。
 介護保険がじわじわと改悪され、このままでは年金で生活している高齢者にはますます住みにくい、いや生きていくのも困難な社会になりつつある日本。もともと、介護保険は公的保障・公的責任の度合いの非常に薄い制度として設計されました。社会保険が本来備えるべき公的責任を縮小させて保険主義を前面に押し出しています。にもかかわらず、制度施行後は「持続可能性の確保」が全面に据えられ介護の実情や施行状況の十分な検証がなされないまま、サービスが削られ負担は増大するという改悪が重ねられてきているのです。
 本来、社会福祉とは、どうあるべきものなのでしょう。「保険原理」ばかりを前面に押し出し、すべての人々の最低限度の生活を国が責任をもって保障するという考え方が忘れられているのではないでしょうか。
 独り暮らしでも、家族が同居していても、認知症になっても、経済的な事情にかかわらず、必要な介護サービスが適切に受けられる制度に「再設計」する必要があるのではないでしょうか。
 そのためには、まず高齢者が支払う介護保険料の高額化を抑え、所得の状況に合わせた支払可能な額に設定し直すなど、多くの課題があると思われますが、まずは私たちが声を上げ、制度改善の運動を通じて国に働きかけるべきときなのです。手遅れにならない前に。

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