平等に良質の医療受ける 権利の保障を  PDF

 平昌オリ・パラは人々に感動を与えて閉会したが、2月に発表された2018年度診療報酬改定は、果たして国民の心を打つような内容だったのだろうか。
 今回の改定は、総じて「入院から在宅へ」の流れを促すものである。まず、遠隔診療を推し進めるために「オンライン診療料」が新設され、次にチームで24時間在宅患者に対応するための「継続診療加算」が新設。さらに特養老人ホームで看取を行いやすくするような報酬体系が設けられた。
 これらの改定は、超高齢化社会を見据えて、医療供給を効率化させるねらいがある。日本と同じ社会保険方式を採用しているドイツやフランスでは、近年、需要側の改革から供給側の改革に移行したことで、医療費は抑制された。したがって今回の改定も、この流れの一環ということができる。
 英国では、サッチャー政権時、医療費の総額を抑制するために、市場メカニズムの導入および競争による効率化が試みられた。しかし結果として病院の経営難、待機患者の増加、サービスの低下などが発生し、かつ医療費も目指していた程には抑制されなかった。ブレア政権以降は、行き過ぎた市場原理は是正され、医療費総額も増額され、国民の満足度は上昇した。近年経済成長が鈍化しつつある中、我が国でも英国の一連の改革を参考にすることも検討されている。
 もともと欧米人は共生よりも克服を重視し、日本人は闘争よりも協調性、助け合いを重視してきた。このように欧米と日本では国民性が異なる。したがってサッチャー時代のような、誰かを犠牲にした大幅な医療費削減が日本で支持されるとは到底思えない。今後、他で類を見ない速度で進む高齢化の中では、他国の例はあまり参考にならず、我が国は試行錯誤しながら独自の道を模索してゆくことになる。
 その場合、我々が留意しなければならない事項は以下のようであると考える。すなわち、目指すべき医療制度は、効率一辺倒ではなく、我が国固有の国民性に合致したものであり、その中では皆が平等に良質の医療を受ける権利が保障されるということである。

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