京都大学医学研究科環境衛生学分野教授 小泉 昭夫
原発再稼働をどう考えるか?
リスクマネージメントの限界
我が国や米国では、多くの政策決定の際にリスク評価とマネージメントがなされ、その上で政策決定がなされる。このリスク評価の手法は、レーガン大統領の時代1980年代に政策決定の手法として導入された。リスク評価では、①有害性の同定②容量反応関係③曝露評価④リスクの定量化―の4段階からなり、最終的にリスクは定量化され、倫理的側面、科学技術的可能性、コストベネフィット、経済効果等を勘案し施策は実行される。
暴力団の持つ日本刀と、博物館にある日本刀の例が分かりやすい。どちらも有害性は、ヒトの殺傷性であり、②容量反応関係では、時間を用量として過去10年をとってみると、暴力団組織では殺傷に使われた件数は、博物館に保存された日本刀に比べ圧倒的に多く、③の曝露評価では、持ち主が暴力団と博物館のシナリオが考えられ、これらから④のリスク定量化が行われ、過去10年でみると暴力団の日本刀は極めて傷害事件にかかわる可能性が高く、博物館では低いことが分かる。これらを考慮して、リスク管理としては暴力団にある日本刀は押収し、博物館のものでは特に管理が必要でないと判断される。
しかし、今回の調査でもその一端が明らかになったように、原発の有害性は、爆発による放射能の放出だけではない。
我々が明らかにした森林汚染、また現在も研究が進行中の海洋汚染、また地域自治体の崩壊や、地域産業基盤や経済基盤、インフラ棄損、個人の生活の変容、廃炉にかかわる問題や廃炉後の処分の未確立、こうした震災後初めて明らかになった種々の有害事象はリスクマネージメントでは考慮されておらず、震災以前のリスクマネージメントは砂上の楼閣に等しい。
すなわち、震災以降を経験した我々には、①の原発の事故(人為的、工学的)のみをハザードとして想定するだけでは不十分であり、地震や火山噴火など自然災害を考慮し、原発の制御の喪失や破壊が生じることをも想定する必要がある。さらに、倫理的な問題として、国民の生活権や財産権を脅かす事態が生じるため、リスク評価を俎上に載せて議論すること自体が公序良俗に反する可能性も出てくる。
震災以降の原発再稼働においても、リスク評価とリスク管理が行われたうえでの再稼働でなければならない。しかし、リスク評価としてそもそも俎上に載せてよいかという倫理的問題、技術的・根源的な問題が未解決であること等を考えると、再稼働は、理性的政策決定に背を向けた、政府および電力会社の“原発ファースト”政策のごり押しと言われても仕方あるまい。
表1 週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間数が30時間未満の職員
週所定労働日数 1年間の所定労働日数 雇い入れの日から起算して継続勤務期間
6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月以上
4日 169日~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121日~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日 73日~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日 48日~ 72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日
表2 週所定労働日数が5日以上又は週所定労働時間数が30時間以上の職員
勤続年数 6カ月 1年6カ月 2年6カ月 3年6カ月 4年6カ月 5年6カ月 6年6カ月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日