2017年9月度の代議員アンケートで応召義務を取り上げたところ、いくつかの疑問ご意見を自由筆記の形で承りましたので、医療裁判等に造詣の深い、京都中央法律事務所の福山勝紀弁護士に答えていただきました。シリーズ化して紹介していきたいと思います。(アンケート結果は本紙第3014号にて既報)
質問 ①専門外であることが明白な患者、②医師の飲酒時の診療、③飛行機内などの急病者、④往診が通常の手段でアクセスできない場所など、⑤今後、遠隔診療が進むとテレビ電話で判断を強制されることも出てくるかもわかりません。これらは、応召義務の「正当な事由」にあたりますか?
私がお答えします!
京都中央法律事務所
弁護士 福山 勝紀
①について、専門外であることが明白であったとしても、その患者の置かれている状況などから、すぐに治療を受けることが困難であると認められる場合などには、対処療法などをすべきであるというケースがあることは否定できないと思われます。
②について、基本的に高度の専門的判断と技能の行使を要する医療行為については、基本的には許されない、裏を返せば断る正当な理由があると言えると思われます。もっとも、飲酒の程度や患者の状況などから、応召義務がないとまでは言えません。
③について、日本医事新報No4094(2002・10・12)にも掲載されていますが、基本的に「乗客」として乗っている以上、応召義務の適用はないものと考えられます。
④について、具体的にどのような場合かが少し想定しづらいですが、仮に過疎地で診療所を開設されている場合に極めてアクセスしづらい患者さんから連絡がきた場合だとします。この場合には、症状にもよると思いますが、すぐには往診できないこと等を説明し、救急車を呼ぶようにアドバイスすれば、応召義務は履行したと言えるのではないかと思います。
⑤について、この点は、将来的なところもありますので、どうなるか分かりません。ただし、やはり、基本的には対面での問診が原則であることには変わりないかと思います。
註:「正当な事由」とは、原則として医師の不在または病気等により事実上診療が不可能である場合を指す(千葉地裁昭和61年7月25日判決)。