――地域医療構想調整会議で辰巳院長が「医師不足・医療資源不足等について議論にあげる必要がある」と発言されたことが印象的でした。
辰巳 南丹地域保健医療協議の中で、残念ながら医師不足等への対応などが話し合われませんでした。今後の継続した課題として、しっかりとあげていただかないといけません。18年4月から始まる新専門医制度を危惧していて、例えば内科の専攻医は、プログラムは3年体制で3年目に内科を再度ローテーションして専門医試験を受けるという流れになっています。京都府北部では医師不足・偏在が課題だと明らかになっているような状況で、新専門医制度をきっちりと完結できるようなプログラムを組めて、なおかつ医師不足・偏在にも対応できるような人材配置が可能なのか。我々ももちろんですが、みなさん不安がっています。
特に北部の病院はすべての診療科を備えていない場合もあるので、新専門医制度の研修ができるのかが危惧されます。当院は幸い、新専門医制度の内科の基幹施設となりました。あとは全て大学病院の連携です。連携施設の場合、大学病院に2年間、連携施設には1年しか医師が派遣されません。これまで3年医師を預かっていた施設は単純に3分の1になってしまいます。基幹施設でも2年になってしまい、これまでの3分の2になってしまいますし、これではますます医師不足に拍車がかかるのではないでしょうか。
ですから、都道府県の地域医療調整会議においても、今まで以上に医師不足が助長されないよう議論を行ってほしいと思います。
専門医資格を取得する医師のキャリアの観点からも、地域医療を守る観点からもこの問題は考えないといけないと思います。非常に難しいですね。
加えて、今後政府の働き方改革が進むと医師にも適用されるでしょう。もちろん、医師も労働者ですので、メンタルヘルスを含む健康問題を管理していかなければならないし、過重労働ももってのほかと考えています。それは大前提なのですが、一方で今のまま医師不足や偏在が続く中、労務管理をしっかりと守ることだけに重点を置くと応召義務に応えきれないのではないかと危惧しています。医師も労働者であるということと、地域の人たちの健康・命を預かるということ。この矛盾に対しては、まだ明確な答えが出せておらず、頭を悩ませています。これはひとつの病院だけで解決できる問題ではないですね。
――国は2040年に医師数が充足するという見解を示しています。その上で医師需給の議論において、規制を伴う医師偏在対策として、保険医定数制や自由開業規制などの適正配置がテーマにあがっていますが、その点についていかがでしょうか。
辰巳 今後ますます医師不足や医師偏在が助長される傾向が続くなら、ある程度良識の範囲の中で医師の定数制や自由開業制について議論していく必要があるのではないかと感じています。医師それぞれの人生にもかかわってきますし、ご本人の希望もあるでしょう。一方で、診療科偏在は大きな問題だと思います。決して適正配置を推進しなければならないとは思いませんが、日本の地域医療を守るという観点から議論する時期にきているのではないでしょうか。
――新専門医制度で9割の医師が資格を取得するという報道がありました。新専門医制度では定数が決められていますので、事実上、診療科目の定数制になっていくのではないかと思います。
辰巳 やむをえない流れかと思いますし、その点に関して違和感は感じません。疾病構造も変化していきますし、需要に応じた診療科の医師を育てる必要があるだろうと思います。ただし、我々医師がそのことについて議論を重ねる必要はあると思います。
――本日はありがとうございました。