主張 看板は「多死社会の多様な看取り」 医師の待遇改善を  PDF

 12月18日に大臣折衝が行われ、診療報酬等の改定率が決定。ネット改定率は実質、1・19%マイナスとなった。本体は0・55%プラスだが、薬価・材料価格が1・74%マイナス。介護報酬の改定率は0・54%プラスとなった。
 今回は医療、介護の同時改定だ。その目指すところは「地域包括ケアシステムの構築」であると言われ、その一つに、多死社会に向けて多様な看取りの場を確保することが挙げられている。病院外死を増やすための誘導策として、特別養護老人ホームでの看取り体制整備に加算を付けようとの案があるそうだ。すでにその体制で、年間2桁の看取りを行っている者として、現実を述べてみたい。
 言うまでもなく、特別養護老人ホームは医療機関ではないから、医療保険の報酬は「入院外」が適用される。ご存知のとおり、その算定には種々の制限が課せられている。配置医師は施設から嘱託報酬を受けているので、初再診料、各種の指導料、管理料等が算定不可となっている。
 契約内容にもよろうが、小生の報酬は週1回2時間の出務分のみである。状態急変による要請の場合は、往診料とそれに付随する基本診療料が算定可とはなっている。しかし、平均年齢90歳に近い80人の要介護高齢者を抱えて、週1回2時間ですむわけがないことは誰の目にも明らかであろう。気になる人の様子を診ようと、訪問診療を終えた夕方から顔を出すのがほとんど日課となっている。施設の医療スタッフは、小生の姿を見かければ「あの方があれ」「この方がそれ」と仕事を持ってきてくれ、通常出務の日以上の仕事をする破目となるが、超勤手当などあろうはずもない。「おかげさまで、入院による空床が少なく助かっています」と喜んでもらえるのがせめてもの慰め!
 こんな待遇で24時間の看取りにも対応しろなんて…。加算が付くのは施設の介護報酬だけなのだから、とても裾野の拡大にはつながらないはず。
 乗りかかった船のボランティアを、身体と頭の許す限り続けるしかないのでしょう。

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