保育所施策  PDF

 今日も少子化対策は重大な課題であり、多くの自治体が保育対策を進めているが、その評価指標として量・質・負担の3点を挙げておきたい。量とは、待機児童の人数と施設数である。二つ目の質とは、病児、障害児、夜間など多様なニーズへの対応と良質で安全な保育を確保するための施設・職員配置の基準である。三つ目は利用者負担であり、保護者の経済状況に応じた保育料軽減である。この指標に基づいて政策を進めるならば、自治体の建設・運営経費への超過負担は避けられない。今日の状況を見ると、いくつかの自治体では定員のみを増やし、職員には非正規雇用や無資格者を多用する等といった手法で待機児童減少の成果を誇っているが、これは子どもたちの安全を犠牲にした見せかけの待機児童対策ではないか。
 京都市は独自充実として①職員処遇②保育内容③施設面積援護―を行っていた。自治体財政がさらに窮乏する中で、それらの仕組みが維持されるのか、不安を禁じ得ない。
 また私が局長時代、国が幼保一元化に取り組み始めた。主に政治レベルで進められた政策であり、保育所と幼稚園という、職員配置も保育時間帯も、さらに存在意義も違うものとして長年運営されてきた制度を合体するという政策である。当初は抵抗が強かった文科省、厚労省が一元化へ動き始めた背景として理念的には両施設の長所を生かすということが主張されたが、現実には保育所が主流となったことで幼稚園の利用者が減少するという構造的な要因への対応という政治的要請が文科省にはあり、厚労省にとっては増加する保育需要に対してコストを抑制するという長期的な財政的要請が背景にあるという議論もされていた。
 幼保一元化について、京都市会での対応で、私は「保育所と同じレベルの処遇ができるなら反対はしない」と一貫して主張した。
 私が大学へ移って、社会・経済全体の視点から福祉を観察するようになって、当時を振り返って感じていた違和感は、本来経済原理である市場主義を「社会福祉の基礎構造改革」という形で画一的に福祉の分野へ持ち込むことで、子どもたちの安全さえ脅かされかねないというリスクである。

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