決算対策と消費税(1,000万円超個人事業者)  PDF

 決算対策と消費税の留意点はつぎのとおりである。
1.決算
 所得金額は、収入金額から必要経費を差引し算出されるため、本年分の収入金額になるものや未払経費・減価償却費など本年分の必要経費になるものを計上する必要がある。この手続きを「決算整理」という。
(1)収入金額
 年内に保険診療・検診・予防接種等を行ったもので、年末までに入金していないものは、未収入金に計上し収入金額に計上する必要がある。
(2)必要経費
① 薬品等の棚卸
 医薬品や診療材料等は、収入の原価として実際に使用したものが必要経費となる。棚卸の金額は、年末に残っている薬品等の数量(実際に調べる)にその年の最終の仕入単価(納入価)を乗じて計算する(消費税分はプラスする)。
② 少額減価償却資産の必要経費算入
 青色申告者が1個・1組30万円未満(消費税込)の器具備品等を取得し事業に使用した場合には、取得価額の合計額が300万円に達するまでの金額(平成29年1月1日以降に開業された方は取得価額の合計額300万円を按分計算)を取得した年の必要経費にすることができる。確定申告書に取得価額に関する明細書を添付する必要がある。

(注)少額減価償却資産を取得した年に必要経費に算入した場合は、償却資産税の対象資産となるので留意する必要がある。

③ 減価償却制度について
 減価償却資産(建物・医療機械など)について平成19年4月1日以後に取得したものと平成19年3月31日以前に取得したものに区分し、それぞれの償却方法で減価償却し、必要経費に計上する。平成19年3月31日以前に取得した減価償却資産について償却費の累積額が取得価額の95%に達している場合には、取得価額の5%から1円を控除した額について、5年間均等償却し、必要経費に計上する。
 所有権移転外リース契約については、リース資産を売買により取得したものとされるため、リース料総額(取得価額)をリース期間定額法により減価償却し、必要経費に計上する。

(注)平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備・構築物の償却方法は定額法とされたので、留意する必要がある。テナントの内装工事等は、償却資産税の対象資産となるので留意する必要がある。

④ 特別償却の必要経費算入等
 青色申告者が適用することができる主な特別償却等はつぎのとおりである。その選択にあたっては、その可否を検討し、特別償却等を適用する必要がある。

「医療用機器等(新品)の特別償却(措置法12条の2)」

 取得価額500万円以上(消費税込)の医療用機器(平成31年3月31日までに取得等したものに限る)を取得し事業の用に供した場合には、普通償却費とは別に取得価額の12%を特別償却することができる。ただし、所有権移転外リース契約については、特別償却制度の適用を受けることができない。

(注)平成21年4月1日以降取得等した医療機器は厚生労働大臣が指定したものが対象とされる。

「中小企業者の機械等(新品)の特別償却又は税額控除(措置法10条の3)」

 取得価額120万円以上(消費税込)の一定のコンピュータ等(平成29年3月31日までに取得等したものに限る)や取得価額70万円以上(消費税込)の一定のソフトウエアを取得し事業の用に供した場合には、普通償却費とは別に取得価額の30%の特別償却か取得価額の7%の税額控除のいずれか選択適用することができる。なお、平成29年3月31日までに取得等をしたコンピュータ等のうち特定生産性向上設備等に該当するものは、その普通償却費との合計でその取得価額までの特別償却か取得価額の10%の税額控除のいずれか選択適用することができる。
 所有権移転外リース契約については、リース料総額が上記要件を満たせば、税額控除の適用を受けることができる。ただし、特別償却制度の適用は受けることができない。

「生産性向上設備等(新品)の特別償却又は税額控除(旧措法10条の5の4)」

 特定生産性向上設備等(平成29年3月31日までに取得したものに限る)の取得等し、事業の用に供した場合には、その取得価額の50%(建物・構築物は、25%)の特別償却か取得価額の4%(建物・構築物は、2%)の税額控除のいずれか選択適用することができる。

「雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除(措置法10条の5の4)」

 次のすべての要件を満たすときは、雇用者給与等支給増加額(注1)の10%の税額控除ができる。
① 雇用者給与等支給増加額の基準雇用者給与等支給額に対する割合が3%以上であること。
② 雇用者給与等支給額が比較雇用者給与等支給額(前年)以上であること。
③ 平均給与等支給額(注2)が比較平均給与等支給額(前年)を超えていること。

(注1)雇用者給与等支給額(今年)―基準雇用者給与等支給額(平成25年分)
(注2)継続雇用者(雇用保険一般被保険者)に対する給与等支給額

2.消費税

 平成27年分の課税売上(検診や予防接種、自費診療等)(注1)1,000万円超の事業者又は平成28年分の特定期間(注2)の課税売上1,000万円超の事業者は、平成29年分の消費税課税事業者となる。
 平成29年分から新たに課税事業者になられた方で、簡易課税制度を選択した場合には、簡易課税制度を2年間継続する必要がある。
 平成30年分の消費税申告分から「本則課税」から「簡易課税」に変更する場合、「簡易課税」から「本則課税」に変更する場合や平成23年税法改正(注3)の適用により平成30年分から課税事業者になられる方で、「簡易課税制度」を選択する場合には、その可否を検討し、平成29年12月31日までに税務署に所定の届出書を提出する必要がある。

(注1)事業資産の譲渡や他の事業、不動産収入(地代収入、居住用の賃貸収入は除く)なども自費診療等に合算するので注意が必要である。
(注2)免税事業者の判定(平成23年消費税法改正)
    基準期間(前々年)の課税売上が1,000万円以下、前年の1月から6月まで(特定期間)の課税売上が1,000万円以下(売上に代えてその期間の給与支給額でもよい)のいずれにも該当する者が免税事業者となる。
(注3)高額特定資産(税抜1,000万円以上)の取得等した場合
    課税事業者を選択および簡易課税制度を選択していない事業者が、平成28年4月1日以降、高額特定資産を取得等した場合は、取得等した日の属する課税期間の翌課税期間から2年間は、事業者免税点制度および簡易課税制度を適用されないこととされた。

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