医界寸評  PDF

 雨が降れば傘をさしましょう。私たちはそう教わった。それは正しいことだけれども、傘をさしたほうが幸せかどうかは別問題である。傘をささずに雨にぬれれば、雨の冷たさや恵みをしみじみ味わえるし、それはそれで幸せなこと。自分にとって何が幸せかを感じ取る感性が大切である▼近年、延命措置、遺伝子操作、動物からの臓器移植など生命の在り方そのものを問う技術が登場し、その結果、どこまでが許されるのか、自分は何を望むのかを一人ひとりが考えなければならなくなった▼この問題を考えるとき、生きるとは何か、幸せとは何かという根源的な問題に迫る必要がある。そのためには、肉体の生命を超える価値にまで思いを馳せなければならない。当然ながらこの価値は医療よりも高位であり、それを損なうような医療は要らないということになる▼自分にとって最適な医療を多くの選択肢の中から選ぶにあたって、世間の常識や他人の意見はあまり参考にならない。心を澄まして、自分の中にあるオリジナルな幸福論を見つけ出し、それを基にして選ぶということである。しかしそれが何かわからないときは、しばしの間、戸外の空気を吸いに行こう。鴨川を歩けばコスモスは咲いているし、野良ネコちゃんは楽しそうに遊んでいる。そのうちよい考えが浮かんでくるだろう。(clear)

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