野党連合政権構想の柱は、以下の二つだろう。第一の柱は、平和と憲法。改憲に反対し、自衛隊の海外での武力行使はやめる、沖縄辺野古の米軍基地建設はやめさせる、普天間返還などがその内容。二つ目の柱は、福祉と憲法。アベノミクス・新自由主義政治を止め福祉国家をつくる、福祉国家型財政への転換、福祉国家型民主的行政機構・裁判所、福祉国家型地方自治体への改革、秘密保護法・共謀罪など市民的自由の侵害法制の廃止、知る権利の拡充などだろう。
これらを実現するためには、強い「国民の意思」が必要である。その点で民主党政権は決定的な誤りを犯した。民主党政権の「料理」は福祉国家的で運動を一定反映したものであったが、基本的に国民に依拠しない非民主的なあり方を超えられず、担い手は自分たちだけという脆弱さだった。端的に言って、民主党は、国民を信頼していなかった。鳩山政権は解散、総選挙に訴え、信を問うべきだった。
こう言うと必ず、それで負けたらどうするのかという反論がくるが、日本は軍事独裁政権や一党独裁の国ではない。民主主義の法治国家である。選挙を通じてしか政治は変えられない。選挙を通じて国民に選択肢を提示し、考えてもらう機会を作り、世論を育てる以外に我々の歩いていく道を変える方法はない。
各党は自らの終着駅を横に置くのではなく、むしろ国民の前に明示し、その目指す社会像について各党間で大いに議論することである。そして、安倍政治に代わる新しい受け皿政権は、どこまでは一致し、どこからは一致しないのか。途中駅までの目標を国民にわかる形で示す。それこそが、今求められている、安倍政治に代わる選択肢を具体化する作業である。
後記
この講演録の編集作業中に、安倍首相による衆議院解散報道が出された。安倍首相は、①消費税増税の税収使途変更による「全世代型」社会保障の実現(幼児教育・保育無償化等)②北朝鮮への圧力強化路線の継続③憲法への自衛隊の根拠規定の明記―この三つを争点にするつもりと報道されている。
これに対する野党のスタンスは、今一つはっきりしない。民進党の前原代表は、社会保障については氏の主張の模倣だと批判しているが、それ以外の、例えば九条加憲問題については、一昨年成立した安保法(戦争法)に盛り込まれた武力行使の新3要件が違憲だとする認識を示したうえで、違憲部分をどのようにすれば憲法と合致し、日米間で遺漏なく対応できるか議論したいと述べたとされ、安倍加憲提案に対する立場を明確にはしていない。(読売・9・20)。
本講演で明らかにされたように、国民の政治を変えてほしいという願いを実現する実践的な活路は、今の政治の問題点に対して当面合意できる政策で連携、一致して連合を組み、国民に信を問う以外にない。その時には、①安保法の廃止・九条加憲反対②九条の立場に立って北朝鮮問題を平和的に解決するための主導的外交③財政再建に向けた社会保障の実感ある拡充(財政再建と社会保障拡充は、あれかこれかではない)―を検討してもらいたい。多くの国民は、北朝鮮の問題について、軍事力で解決すべき問題なのかという疑問を持ち、むしろ九条の平和主義の立場での平和の実現を願い、社会保障については、構造改革、新自由主義改革によって弱体化した制度の再建、強く、充実した社会保障を望んでいる。争点は明確だ。戦争か平和か。社会保障の見せかけの充実か真の充実かだ。
これまでの安倍政治に反対し、その転換を求める我々は、対抗する政治勢力の大同団結を強く求めている。