決議  PDF

 医療・社会保障改革が着々と進められている。4月から年金支給額は減らされる一方、国民年金保険料や「現役並み所得」の方の介護サービス利用料が引き上げられた。さらに「介護保険法等改正案」が成立し、「地域共生社会」の名の下に、国と自治体の社会保障に対する公的責任をさらに後退させ、その代替を国民の「自助・互助」に求める方向がいよいよ明確となっている。
 国は都道府県に対し、医療費支出目標を盛り込んだ第3期医療費適正化計画、医療計画・地域医療構想、国保都道府県化を通じて、効率的な医療提供体制と医療費抑制の責任を担わせようとしている。病床機能分化・病床数削減による在宅移行が求められているが、現場は対応に苦慮している。
 同時に、新専門医制度が2018年度から開始予定である。地域医療へのさらなる影響が懸念されるとともに、国の新たな医師規制導入(自由開業制の見直し、保険医定数導入等)の企みに組みこまれる危険性も潰えていない。「かかりつけ医」をめぐる動きも含め、国民皆保険制度の「いつでも、どこでも、だれでも」が後退しないよう、意見をあげねばならない。
 アメリカのトランプ大統領がTPPの離脱を表明し、二国間交渉が模索されている。医療を経済・市場原理に委ね、国民皆保険制度の後退につながる動きに反対の声をあげ続けねばならない。
 医療制度の改変が進む中、2018年度には診療報酬・介護報酬の同時改定を迎える。国の医療制度改革を進めるための報酬による露骨な政策誘導が予想されており、保険医運動は危機感を持って立ち向かわねばならない。
 安倍政権は6月15日、参院法務委員会の採決を省略し、本会議での採決に付すという禁じ手を使い、「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ改正組織犯罪処罰法を強行成立させた。マイナンバー制度とともに国民総監視・相互監視社会を到来させるものであり、安倍政権のめざす「戦争ができる国づくり」の一環である。福島第一原発事故による廃炉費用は22兆円を超えるとされる。安倍政権は、人々の生活を根こそぎ破壊した原発事故への反省もなく、未だ原発再稼働に固執している。
 私たち保険医は、2016年の医療研究フォーラム・京都アピールで打ち出した「開業医医療復権」と「保険で良い医療と医業」を実現する医療制度をめざし、以下決議する。

 一、私たち保険医は、国民皆保険制度を堅持し、良き医療を行い、国民の健康を支える
 一、憲法を遵守し、医療・介護・福祉制度を拡充する社会保障基本法の制定をめざす
 一、保険で良い医療と医業の実現に資する診療報酬・介護報酬改定をめざす
 一、受診抑制を加速する患者負担増の見直しを求める
 一、医療費抑制のための新たな医師管理策の導入を阻止する
 一、都道府県の医療費抑制主体化を許さない
 一、新専門医制度が国民医療の質の向上と地域医療活性化に資するものとなるよう求める
 一、日本の皆保険制度を根本から揺るがすTPP、二国間交渉等FTAにはその参加から撤退するよう求める
 一、原発再稼働、原発輸出等は直ちに止め、再生可能エネルギーへ転換することを求める
 一、人命を危険にさらし、平和を脅かす「安全保障改革関連法」・「改正組織犯罪処罰法」の廃止を求める
 一、医業経営を脅かす損税解消策の早期実行を求める
2017年7月30日
京都府保険医協会
第70回定期総会
(第193回定時代議員会合併)

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