私のすすめる BOOK  PDF

礒部 博子(宇治久世)

核のない世界を願い
国境超えた運動の歴史

 この本を手にしたとき、私はページを開くのを少し躊躇しました。「核兵器禁止条約」という聞き慣れた題名ではありましたが、何か堅苦しい感じがしたので、内容はきっと難しい専門用語がたくさん出てくるのだろうなと思ったからです。
 しかし、そうではありませんでした。
 この本では、国連で核兵器禁止条約が採決されたということはどういうことなのか。そしてそれが、今後どういう意味を持つのか、ということが書かれています。中でも、私が一番興味を持ったのは、条約採択までの20年余りのプロセスでした。
 1968年、NPT条約という核に関する不平等な条約が締結され、95年に再検討が行われた際、無期限に延長するかわりに5年ごとに再検討しようと決まったところから始まります。そこから2000年、05年と核兵器の非合法化を目指し、ゆっくりですが、着実な歩みとなるのです。
 そこにはCELAC(中南米カリブ海諸国共同体)や非同盟諸国会議、原水爆禁止世界大会などで多くの人がかかわり、もちろん全世界での地道な署名活動なども力となっています。また、その時々の国際政治の流れに上手く乗ることもポイントになっています。この一連の出来事は読み進むうちに、さながらテレビドラマを見ているような気分にもなります。
 もちろん、この条約が採択されたからといって安心できるわけではありません。今後、各国の批准や核廃棄のプロセスなど、問題はまだまだ山積しています。しかし、この大きな一歩は、我々保険医協会の会員にとっても勇気を与えてもらえる出来事のように思います。この夏、手にとってみてはいかがでしょうか。

富田 宏治 著
本体価格 930円+税
A5判・96頁
かもがわ出版発行

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