地域の医療現場で抱える課題や実情を聞こうと、開始した「地域医療をきく!」。第2回は、夜久野町の西垣哲哉医師(福知山・西垣内科医院)と南山城村の竹澤健医師(相楽・竹澤内科小児科医院)を訪問した。
夜久野編
地域医療支える人材厚く「恵まれている」
西垣哲哉 医師
西垣氏は、福知山医師会在籍の医師が80人くらいで、在宅を行う医師はそのうちの約20人、看取りは年間で約40人ほどと説明。孤独死や自殺など、検察医の案件が年間100人ほどで、施設や病院で亡くなる人もいる。圧倒的に検察医の案件が多く、今現在はこの地域での在宅医療が不足しているとは考えていないと述べた。近くに福知山市民病院や京都ルネス病院などの大きな病院もあり、建替えや増床で特養への入所が入りやすくなっている感触もある。さらには福知山市民病院や新大江病院で在宅の医療チームがあるそう。開業医でも、二世の医師が地域に帰ってきていて在宅を担う若い医師が増えている。これらを勘案すると、この地域の医療資源は恵まれているのではないかと語った。医師以外の人たちが地域に帰ってきているかどうかはわからないが、地域の祭などには戻ってきているようだとのこと。
また、夜久野町では多職種連携が上手くまわっていて地域の民生委員の人も頑張ってくれている。人口はおおよそ4000人でコンパクトにまとまっており、顔見知りも多く、意思疎通がはかりやすい。医療・介護に携わるいろいろな職種と患者、患者家族、行政の連携がはかりやすいと感じていると述べた。
西垣氏は、気にかかる点として高齢者の年金がどんどん下げられている一方で、介護のサービス利用料の負担などが増えていることだと話した。今後、高齢化に歯止めがかからない中、経済的困窮が深くなれば受診抑制を引き起こし、重症化することが懸念される。この地域特有のことではないが、医療においても窓口負担の見直しなど、医療・介護への受診の保障がなによりの課題なのではないかとした。
南山城編
他職種連携で地域医療支えるも村の過疎化に危機感
竹澤 健 医師
竹澤氏は、現在、午前に訪問診療を行い、午後に外来という診療スタイルで南山城村での医療を行っている。住民は高齢者が多く、子ども世代と同居していても、日中は単身となる。運転免許を返納していたり、ひとりでの移動が困難な人も多いため、午前中を訪問診療に当てているのだ。この地域は山城南医療圏だが、生活圏は三重県。車で15分も走れば伊賀市で、木津川市に行くよりも近い。しかし、医療圏を超えて病診連携をはかるのは難しく、実態となる生活圏と医療圏が合っていないと感じることが多々あるとのことだった。
南山城村の医師は竹澤氏ひとりだが、南山城村の人口は2900人ほど。対人口でいうと医師ひとりで対応できる範囲だ。村では在宅看取りが多く、1年で約20人となる。京都山城総合医療センターが大変頼りになり、安心して患者を送れることも大きいとのことだった。
さらに、相楽医師会が2011年に多職種連携ネットワークとして「きづがわねっと」を立ち上げたとのこと。いろんな職種の人たちと顔見知りになり、実際の医療・介護の現場で生かされ、トータルサポートにつながっていると語った。
また竹澤氏は、こうした取組みなどもあり、地域における医療過疎を強く意識したことはないが、村の過疎には問題意識を持っていると述べた。若い世代は南山城から通学・通勤をせず、生活の拠点を移してしまう。50代くらいの世代もやはり生活が不便との理由から移ってしまうことが多い。残されるのはその上の世代。南山城の名産となるお茶農家も年々減っており、今後の村の発展や存続を考えると危機感を覚えるとのことだった。