医界寸評  PDF

 サルバルサンは1907年にパウル・エールリッヒと秦佐八郎とによって開発された、はじめての化学療法剤である。この薬は、「魔法の弾丸」という異名を持っているそうだ▼オペラ「魔弾の射手」がその元ネタだが、このオペラはもともとドイツの伝説によるもので、百発百中必ず狙ったものに当たるという弾丸だ。サルバルサンにこの異名がついたのは、特定の細菌だけを倒し、人間や動物には損傷を与えない薬だかららしい▼我々医師、あるいは研究者は疾病の原因となる細菌やウイルスだけを倒し、目標ではないヒトは傷つけないよう、医薬品や放射線などを開発、使用して疾病と戦っている▼病気との戦いを戦争に喩えての表現であるが、共通点としてどちらも費用がかかる。政府も、軍事に出費するのなら、医療にも十分な出費と人員が供給されるようにしてもらいたい▼そして、兵器が進歩するように、AIDSなどのように、疾患も次々と新らしく面倒なものが登場するので、医療も進歩しなければならない▼「腹が減っては戦ができぬ」。医療者の不足、地域や診療科における医師の偏在問題もある。これらの解決に向けても、医療者が十分に働けるように必要十分な支援が必要で、それには常に資金が必要だ。戦争は交渉で防ぐことができても、病気は交渉では防げない。(mykonos)

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