不測の事態を想定した患者管理が重要
(70歳代前半女性)
〈事故の概要と経過〉
打撲による右足関節部疼痛で来院。レントゲン撮影で移動する際に、床が約11㎝下がっていたために躓いた。両足のレントゲンを撮ったが、特に異常なしと医師は判断して帰宅させた。しかし、その後左足部に腫脹が認められ、当該医療機関が休診であったので、患者は別のA医療機関を受診した。そこでレントゲンをあらためて撮影したところ、左足第5中足骨遠位骨折と診断された。医師はその事実を2日後に患者から知らされ、あらためて事故当日に撮影したレントゲンを確認すると、左足第5中足骨遠位部に骨折が写っていたことが判明した。
患者側からは特に賠償請求はなかった。
医療機関側としては、レントゲン室へ移動する際は、段差があるので高齢患者等には、必ずスタッフが誘導することにしていた。また、段差の注意喚起の貼り紙も実効がないと判断して院内掲示をしていなかった。理由は特定できないが、自発的に患者が移動して入室した時に、今回に限りスタッフの誘導がなかったので事故が発生したとして、管理体制に不備があったことを認めた。骨折の発見が2日遅れたが、患者の予後に影響はないとのことだった。
紛争発生から解決まで約2カ月間要した。
〈問題点〉
左足第5中足骨遠位骨折の発見が2日間遅れたが、これは医療機関側の主張通り、患者の予後に影響はない。スタッフが高齢患者を誘導しなかったことは、管理責任を問われてもやむを得ないが、患者は認知症もなく、また、院内は適度に明るかったので、より注意をすれば段差につまずかなかった可能性も否定できない。したがって患者の不注意もあるが、一部医療機関側の管理ミスは認められる。なお、医療機関側は事故後に段差を修理する工事を施行した。常にスタッフの目が届くとは限らないので、可能な限り院内の段差は解消すべきであろう。
〈結果〉
医療機関側が一部管理ミスを認めて、患者はあらためて賠償請求をして、賠償金を支払い示談した。