慢性期病床講演会開く  PDF

がん治療・在宅・高齢者救急が主要課題に
医法協会長・加納繁照氏が講演

 協会は5月30日、一般社団法人日本医療法人協会会長の加納繁照氏(社会医療法人協和会・社会福祉法人大協会理事長、加納総合病院院長)を迎え、「慢性期病床を取り巻く現況と今後―介護医療院を視野に含めて―」をテーマに講演会を行った。府内の会員病院等から69人が参加した。加納氏は社会保障審議会・療養病床の在り方等に関する特別部会委員も務めた。

民間医療機関の経営安定がカギ
 講演で加納氏は、救急搬送受け入れ数から考察すると、日本の医療提供体制は「民間優位」と「公的優位」の地域に二分化される。人口密集地域では「民間優位」であり、高齢者人口は特にこの「民間優位」の都道府県で増加する。高齢化の進行と同じくして、高齢者救急搬送数も増加すると考えられるが、民間の2次救急医療機関の経営基盤が安定しなければ、高齢者救急搬送は受入不能の状態となり、地域包括ケアシステムが成り立たなくなることが危惧される。

「介護医療院」 転換支援は今後の議論
 一方、介護療養病床の転換は国が考えていた通りには進んでいない。廃止は2回目の延期となり、経過措置期間が6年間延長された。新たな転換先とされる介護保険施設は「介護医療院」という名称が決まったものの、具体的な介護報酬、基準、転換支援策については、介護給付費分科会等での今後の議論に委ねられている。同時に、現在地域医療構想調整会議において、各医療圏における医療提供体制の策定が進行している。新たな施設類型については、その内容をしっかりと検討し、自院の患者層に合致する移行形態をじっくり考える必要がある。
 京都府では、療養病床における介護療養病床の比率が高く、療養病棟入院基本料1と2の割合がほぼ同じであること等、全国の平均的な状況とは異なっていることから、地域に合った移行形態を考えなければならない。

自院の立ち位置定めること
 高齢化の進展による社会保障費は急速に増加しており、2018年度診療報酬・介護報酬改定は、厳しい内容が予想される。また今後若年者医療は縮小し、高齢者医療が拡大するが、鍵となるのはがん治療、在宅医療、高齢者救急の三つである。地域包括ケア病棟の活用方法を含めて、多角的に自院の立ち位置を定めることが重要―等と解説した。

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