対抗構想としての「新しい福祉国家」
財源も含めた議論の構築を
副理事長 渡邉 賢治
私の母は今年の5月で83歳になった。今も診療所で仕事をしている。年齢的なこともあり、仕事の範囲はだいぶ狭まってきたが、スタッフやさまざまな方に支えられ、まだ現役で受付をしている。
今の生活が成り立つのは、安定した収入、雇用があるからで、私が病気で働けなくなると、私の生活が大変になるのはもちろん、母の生活も成り立たなくなる。二人が健康であるという、いたって不安定な状況、いつ壊れてもおかしくない状況で私達の生活は成り立っているのだ。健康であることが前提での社会になってしまっている。今の状況が崩れ、助けが必要になっても、国は自分たちで何とかしろ、どうしようもなくなったら国が最低限の保障をしてやる、国を当てにするなと言わんばかりだ。
社会保障制度の理念を根本から変え、その間違った社会保障の理念の基で、私たちは危うい、不安定な生活を送っている。
衆議院で可決した「地域包括ケアシステムの強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」の中の「地域共生社会」で、国は「我が事・丸ごと」の地域づくりを掲げている。高齢者を対象とする「地域包括ケアシステム」の概念を高齢者・障害者・子どもなど全ての世代、福祉サービスに広げて、住民同士が支え合うというものだ。国が責任を持って行わなければならない社会保障が今以上に後退することを強く懸念する。
来年は、地域医療構想、国民健康保険の都道府県化、さらに診療報酬、介護報酬の同時改定など、医療・介護制度の大きな転換の年になる。今年1年間の保険医運動は、これまで以上に大きな意味を持つ。
今年度も地区医師会との懇談を通じて現場で起きている問題点や要望をお聞かせいただき、それらをまとめ、京都市、京都府、国へと要望を出すとともに、協会が目指している「新しい福祉国家」という対抗構想を財源論とともにさらに進めていきたい。