協会は5月30日、阪南中央病院医療安全管理部の北田淳子氏を講師に迎え、「病院は事故にどのように対処するか~現場での体験を踏まえて~」をテーマに医療安全担当者交流会を開催。出席者は17人。
北田氏より、ALSを患った夫が胃瘻のボタン交換で入院した際に起こった医療事故(人工呼吸器のガイドドライブラインが外れる)について、事故発症時からの病院の対応や患者家族の心情等について説明を受けた。
今回の事故の背景は、看護師が人口呼吸器のガイドドライブラインが外れていたことに気が付かないまま痰の吸引が必要だと判断し、吸引を続けた結果、酸素飽和度の低下を招き、その後低酸素状態に陥り2カ月後に死亡。北田氏は事故の問題点として、患者が意思伝達装置で「胸を押して」と打刻するなど苦しさを訴えており、また人工呼吸器にトラブルが発生している点を考慮するとアンビューでの手動換気への切り替えが求められていたにもかかわらず、緊急時の伝達方法や申し送りの不備などさまざまな要因が重なり、看護師はスクイージングの方法を選択したことが事故の大きな原因であると指摘。病院側もその事実を認め、速やかな謝罪と事故の経過や原因究明および再発防止対策についての報告があったため、病院が起こした事故は許せないが、「正直に被害者家族に向き合う」という病院側の誠実な姿勢によって、我々家族の気持ちを怒りに変えず前を向いて次に進ませてくれたことも事実であると評価した。
さらに、病院は事故後、救急時のスムーズな対応に向けての訓練や教育等の「安全対策」の充実を図るとともに、「意見書箱の設置」や「配布型カルテ開示」(入院時、患者に希望を聴取して病室に配布)の導入など新たな試みにも取り組んだことについても紹介した。
北田氏自身も夫の死後、当該病院に院内相談員として勤務し医師と患者の橋渡しとして日々奮闘する中で、医療事故は個人の責任ではなく組織として対応することが重要で、そのためにも「チーム医療の大切さ」「コミュニケーションの大切さ」「危機管理の大切さ」を痛感していると述べた。
最後に、医療事故が起きた際、患者やその家族と向き合うことは非常に辛いことだが、医療機関側は「うそをつかない」「隠さない」「患者にわかるまで説明する」ことを実践し、患者側ときちんと向き合うことでお互いが救われることに繋がるのではないかと締めくくった。