京都府に地区の意見集約し要望  PDF

医療費抑制でなく地域の実情考慮を
 協会は府の医療・介護担当課と4月21日に京都府庁で懇談した。懇談は、2016年度の地区医師会との懇談会を踏まえ、協会がまとめた要望書「京都府民の公的な医療保障の拡充を求める要望書」を提出し、意見交換する場として設定したもの。府からは医療保険政策課長の丸毛信樹氏、同課医療保険広域化担当課長の安原孝啓氏、医療課医務・看護担当課長の真下信男氏、高齢者支援課副課長・南部慎一氏が対応。協会からは垣田さち子理事長、吉中丈志理事が出席。地区医師会にも出席を呼びかけ、宇治久世医師会の伊勢村卓司副会長が出席した。

医師規制反対と在宅医療保障など求める
 協会の要望は、18年度から第3期を迎え、法改定により実効性が高められる都道府県医療費適正化計画の策定にあたり、府が引き続き都道府県による医療費適正化路線への慎重姿勢を堅持するよう求めた。
 その上で同時に策定となる医療計画や地域医療構想に関連し、国が検討する「医師に対する新たな規制」(保険医定数制・定年制・自由開業制規制等)の導入に反対するとともに、医療計画
に反映させないことや、在宅医療の保障に向けた府の対応を問うた。
 また、国のねらう患者負担増や、介護保険制度をめぐって、要介護認定で「軽度」と判定された人に対する「保険給付外し」の差別的取扱い、福祉用具貸与の原則自己負担化等に反対するよう求めた。
 さらに、同じく18年度からの国保都道府県化について、定額3400億円の追加公費だけでなく、医療費全体に対する国庫負担割合が抜本的に引き上げられるよう国に求めることや、新たに保険者となる立場から、資格証明書交付の全廃や人権を脅かす滞納処分を中止することも求めた。
 加えて、従来から国民健康保険の「減額調整」対象となっている「福祉医療制度」について、国が未就学時の子どもの医療費助成について減額調整を廃止するのを受け、さらにすべての減額調整を廃止するよう国に対して求めることも要請した。

地区から直接要望
 懇談では、宇治久世医師会の土井邦紘会長からの質問・要望事項を伊勢村副会長が説明。国からの伝達事項、京都府当局発案の事項について、市町村や医師会へ速やかに伝達すること。病床機能分化の結果、必要となる在宅医療の確保策や、高額薬剤の登場で懸念される患者負担への軽減策等を求めた。

府も一定の理解示す国への要望継続と回答
 要望に対し府は項目ごとに回答。
 医療費適正化計画について、府は1期・2期ともに、医療費適正化を目的とせず、健康長寿を目指す立場。健康づくりや医療提供体制確立を進め、医療費はあくまで取り組みの結果と考えている。そのため、名称も「中期的な医療費の推移に関する見通し」としてきたと従来の立場を説明。
第3期についても、基本的にそうした取り組みの上に立って検討するとした。
 地域医療構想については、地域包括ケア構想として取りまとめ、国の示す推計の数値をダイレクトに使用せず、各病院からのヒヤリングや地域医療構想調整会議での意見を受けて、幅のある形で出した旨を説明。今年度以降も地域医療構想調整会議を開催し、進捗状況の管理や新しい対策も検討したいと述べた。
 医師の規制については、今後の国の動きを見極めるとともに、新専門医制度における診療科別定員枠設定には反対と述べた。また在宅医療については、訪問診療にあたる医師の高齢化が進み、担い手問題が深刻であるとの指摘に理解を示し、新たな補助金創設も含めた対策を進めていることを説明した。
 国保都道府県化については、市町村が運営する国保制度は、被保険者に占める高齢者や不安定就労層の比率が高い。したがって負担能力は低く、給付が高くなる。今般、市町村だけで国保を担うのは限界ということで、都道府県化された。これが基本的な観点である。国保はナショナル・ミニマムであり、最後の砦である。3400億円の追加公費については評価すべきと述べつつ、今後とも、必要な要望は行う旨、説明した。

医療介護保障求め継続して対話を
 意見交換では、協会から中小病院や有床診に着目した対策の必要性を強調するとともに、在宅医療の現状を訴えた。地区からは、高度急性期から患者さんが地域に送られてきて、溢れつつある。我々医師は高齢化し、抱えられる患者さんの人数が限られる。若い人も入ってこないと説明し、府の対応強化を求めた。
 医療・介護分野の幅広い範囲を網羅して意見交換する場となったが、そのこと自体、国が都道府県を医療費抑制主体に位置づける制度改革を進めていることを裏付けているといえよう。
 協会は今後も、京都府に会員の意見を届けつつ、府の動向を注視し、府民への
医療・介護保障を求める取り組みを進めていく。

ページの先頭へ