マダガスカル 9  PDF

ヨハネスブルグ ネルソンマンデラスクエア

 マダガスカル出発前の空港カウンターでスーツケースは関空まで直送すると聞かされた。予定表ではスーツケースは南アで受け取るとされていたが、今更荷物の入れ替えはできず、手荷物ザックだけ、着のみ着のままで南ア滞在を余儀なくされることになった。
 南ア入国手続き後、迎えの運転手が待つ待合へ。人々の中で頭一つ、二つ抜きんでた190㎝はあろうかとみられる黒人の運転手、名はウィリー、愛想は普通、ホテルまでの40分間が彼の仕事だ。一般道路に出るとCDを聴き始めた。渋み、深みのある声量、心地よい歌声、彼の好きな歌手だという。高速道路に入るとすぐにボリュームを少し上げた、さらに上げた。1曲目の反応はそれほどではなかったが、2曲目が始まり様子が変わってきた。ムンムンと曲に合わせだし、左手は天井に突き出し小刻みに振る、掌を開く、閉じる、丸薬を丸める動き、ダッシュボードに指を突き、爪弾く、身体もそれに合わせ揺する、かしげる、首を振る、肩を持ち上げ「歌は大好き!」言わなくてもわかるよ。「ちょっと車内が暑い」と声をかけるが、聞こえないのか反応なし。所々好きなフレーズに合わせ大声を張り上げる。低い旋律から徐々に高まっていく特に彼の大好きな、この曲最大の聴かせどころに達した、もうだめだ! 「おい両手を離すな!!」 両手が宙に!!!
 ここでもしっかりとシートベルトを締めなおした。
 いい歌だろう? ウンウン。明日CDを探してみるから歌手の名前を教えろと降りる際に手帳を差し出したら、明日も自分が送るから、コピーしてプレゼントしてくれるという。
 翌朝、迎えが来るまで隣のネルソンマンデラスクエアで時間つぶし、とにかく広い。けれども高級品店の客はまばら、込み合うのは子ども用品店、フードコート、スーパー店、Trumpのカフェテリアも客は多かった。電気店では日本の家電製品の凋落ぶりが目についた。韓国製品、中国製品が幅を利かせていた。空港までは昨日の運転手だが、今日は普通。彼からコピーされたCDを受け取り、検索したところアイザック・ヘイズ:米国の黒人歌手でアカデミー賞・グラミー賞・ゴールデングローブ賞など取った実力派歌手であった。
 南ア出国時、パスポートコントロール係は若い黒人女性、離れたところからもわかる憂鬱そうな表情、頭を傾げ、肘で頭を支えている。パスポートのチェック器械を通そうとして、差し込めずスルッと落としてしまう。「片頭痛?」と尋ねるとコクンとうなずく。
 空港免税店でお土産、ワインを買って、これから香港まで13時間20分、乗り継ぎに3時間、なお3時間50分かけ関空へ。今回の旅行、気配りのきいた添乗員同行のいつもの旅と違う緊張感ある個人旅行が終わった。マダガスカル北部のビーチリゾートのヌシ・ベ、北東のセント・マリー島、ムルンダバ近くのツインギー奇岩群、南のベレンティ保護区などまだまだ見どころはある。効率的な行程さえ組めば、特色ある旅行ができそうだ。(完)

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