協会理事会は「ICTの活用と基金の審査」をテーマに4月4日、特別討議を開催。全国社会保険診療報酬支払基金労働組合(全基労)の出口潔書記長、道綱茂兵庫支部長から情報提供および問題提起を受けた。議論では、医療保険制度の根幹である支払基金の役割の重要性を確認、三者構成による民主的な審査委員会の運営と、都道府県単位の審査委員会による審査を守るべきとの方針を確認した。
今回の理事会特別討議は、全基労からの呼びかけにより開催した。
16年2月29日、規制改革会議の健康・医療ワーキンググループ(WG)は「診療報酬の審査の効率化と統一性の確保について(論点整理)」をまとめ、「審査のあり方をゼロベースで見直す」ことを打ち出した。これを受けて、厚労省は4月25日、「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」を設置、9回の議論を重ねた。(本紙2977号既報)
一方、支払基金は6月27日、自己組織の改革に関する提言を発表。全国統一的な審査判断基準を策定、全国共通のコンピュータチェックに反映させて支部間格差を解消するとともに、審査委員会は都道府県単位から地域単位に移行し、それらの地域の事務局は必要最低限のリエゾンオフィス(事務連絡所)に機能を限定する改革案を示していた。この案は有識者検討会でも報告されている。
有識者検討会は17年1月12日に報告書をまとめた。焦点の審査業務の効率化・審査基準の統一化に関しては、システム構築の抜本的見直しと専門家チームの設置、コンピュータチェックルールの公開などを求めている。また、支払基金の組織・体制の在り方については、①レセプトの電子化により都道府県ごとの支部は不要であり、ブロック化など支部の集約化・一元化に向けて見直すべきとの意見と、②現在の支部体制が医療機関に対するきめ細やかなやりとりを通じた適切な審査を可能にしており、各支部は残すべきだとの意見が併記された。
今後は、具体的なスケジュールなどを盛り込んだ改革工程表を、支払基金と厚労省が17年春をめどに取りまとめる。そして17年夏をめどに政府方針として決定し、18年通常国会において改革に関する法整備を行うことが予定されている。
一方、17年1月26日、厚労省より説明を受けた規制改革推進会議は、「支払基金の組織・体制の在り方について両論併記になっている。閣議決定に沿っていない」として、報告書の方向性に強い難色を示している。
京都府独自の審査基準は我々の財産
理事会特別討議では全基労より以上の経緯が解説された後、意見交換した。
「コンピュータ審査が偏重されると、画一的に審査されてしまい、患者の病態に応じた診療ができなくなってしまう」「医療提供者側として、三者構成の審査委員会が絶対必要だと思っている」「これ以上コンピュータ審査が強まると、個々の患者に見合った医療が提供できなくなると思う」「ある程度まで審査が機械化されるのは仕方ないが、審査基準は公表してもらわないと困る」等の意見が出された。
最後に、垣田理事長は「支払基金とは何なのか、という基本的な議論をしてほしい。日本の医療保険制度ほど公平なシステムはなく、その中で支払基金は大事な仕事をしている。審査委員の方たちも、一般の保険医からの不満を受け止めながら、民主的な運営の中でルールを決め、保険診療を守るために審査しておられる。都道府県単位の審査基準は、我々が培ってきた財産であり、京都府において京都ルールで診療して何が悪いのか。画一的に全国ルールで縛ることについては、審査委員を含め、京都の保険医には、凄く抵抗があると思う」と述べ、議論をまとめた。
協会はICTの「活用」による審査制度の改革と審査支払機関の組織改革について今後も注視するとともに、都道府県単位の三者構成による民主的な審査委員会の体制を守るため活動したい。