患者情報の提供で意見提出 捜査機関からの照会でも同意は必要!  PDF

警察等の捜査機関から患者の状況について照会があった会員医療機関より、協会へ対応の相談が寄せられた。これを受け、検討を開始し、顧問弁護士に確認を行った。

その結果、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」のQ&A(厚生労働省:2005年3月作成、13年4月1日改定)に、「警察や検察等捜査機関からの照会や事情聴取は、個人情報保護法第23条第1項第1号の『法令に基づく場合』に該当し、患者本人の同意を得ずに回答しても同法違反とはならない」との記載がある。しかしながら、ガイドラインの解釈には疑義があり、原則は患者の同意書を取得する必要があるとの見解を得た。
協会の医療安全対策部会としても、同意書なき情報提供の場合、情報提供した医療機関が民事上の責任を負い、最悪の場合患者から逆恨みされる恐れもなきにしもあらずとの観点から、弁護士の見解を尊重する必要があると考え、捜査機関に対して患者情報を提供する際でも、患者本人の同意書の提示を求めることが望ましいことを確認した。
このほど、5月30日施行予定の改正個人情報保護法を受け、「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス(案)」に関するパブリックコメントを個人情報保護委員会事務局が3月1日まで募集していたので、かねてより疑義が生じていた上記部分について、協会顧問弁護士とも相談の上、意見集約を行い、疑問点解消に向けて、下記コメントを弁護士名で2月9日に提出した。一読願いたい。
◇    ◇
厚生労働省の「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイドライン」の改正事項の該当箇所Ⅲ1.(2)①の「改正後」の解釈についての意見
(疑問点)
同改正事項の6行目の「警察や検察等の捜査機関の行う任意捜査も、これへの協力は任意であるものの、法令上の具体的な根拠に基づいて行われるものであり、いずれも『法令に基づく場合』に該当すると解釈されている」とあります。
この法令上の具体的な根拠とは、「個人情報保護法第23条第1項第1号」の「法令に基づく場合」に該当するとされ、患者本人の同意を得ずに回答しても同法違反とはなりませんと説明されています。
ところで、この「個人情報保護法第23条第1項第1号」の「法令に基づく場合」とは、何を指すのでしょうか。それは、結局、警察や検察等の捜査機関の行う刑事訴訟法第197条第②項に基づく任意捜査を指すものでしょう。それが「法令に基づく場合」に該当すると解釈されているということでしょうか。これは、結局、循環論に過ぎないのではないでしょうか。
問題は、個人データが患者の診療記録(カルテ)の場合に、当該患者の同意のない場合は、任意捜査とは言えない場合があり、刑事訴訟法第197条第2項に基づく「公私の団体に照会する報告」の限界をも逸脱している場合があるかと思われます。この場合は、任意捜査ではなく、同条第218条1項の令状による検証が必要でしょう。
これは刑事訴訟法第197条第1項の「必要な取り調べ」であり、同但し書の「強制の処分」に当たるものとして「この法律に特別の定めのある場合」に該当して令状による検証が必要となります。
その場合にどうするのかということです。単に「法令に基づく場合」であるとして逃げられるのですか。
改正事項の説明には回答がありません。
17年2月9日
京都府保険医協会
顧問弁護士 莇 立明

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