主張/安易な都市型「遠隔診療」の導入は大丈夫か?  PDF

2月8日の中医協の総会で、2018年度の診療報酬の改定で検討課題となっている「遠隔診療」をめぐり、病態が安定している患者への対面診療にICTを活用した遠隔診療の検討を求める支払い側と、対面診療の原則を強く求め、過度なICT活用の遠隔診療の推進に慎重姿勢を崩さない診療側とで意見が対立している、との記事を読んだ。

昨年夏より遠隔診療に関するDMが頻繁に府内各診療所に送られ、協会内で話題となっていた。協会会員からも、これは大丈夫なのかとの問い合わせがくることもあった。まだ議論の途中であり、これからさまざまな問題が指摘されるであろうが、現時点では二つある。
一つ目は、医薬品の郵送である。薬局では医薬品医療機器等法により要処方箋薬の郵送は固く禁じられており、指導されるというが、この件に関し厚労省医政局は、医師法・医療法では規制する項目がなく規制できないという。黙認の状況である。
二つ目は医師法第20条に抵触するかどうかである。厚労省は「あくまで直接の対面診療の補完だが、直接の対面診療に代替しうる程度の患者の心身の状況に関する有用な情報が得られる場合、遠隔診療は直ちに医師法第20条等には抵触しない」との解釈が示されている。
だが、「遠隔診療」で花粉症患者に抗アレルギー薬を処方する際、「かぜぎみなので、風邪薬も処方して下さい」といわれて、「それは今回の診療の範囲に入りません。受診するようにして下さい」とはっきり言い切れるのか。善意で処方する医師は必ずいるだろう。筆者は急病診療所で「のどが痛い」といって耳鼻咽喉科を受診した心筋梗塞患者を診たことがあるが、同じように「のどが痛い」と言われて、「じゃあ、薬出しときますね」といって診療終了後に患者に何かあった場合、単なる医事紛争のみならず、医業停止や保険医療機関指定の取消などの問題に発展しないといえるのか。
安易な「遠隔診療」の導入は、必ず何か問題が起こるだろう。

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