地域医療を守るのは我々医師 若者よ、北部に行こう!
医師の偏在、とくに京都府北部では医師不足は深刻な問題になっています。この地域の医師の意見として、新専門医制度によって医師がやってくる仕組みになってほしいというのがありますが、たとえそうなったとしてもこの方法でうまく人が動くのかはよくわかりません。
府北部といえば、私も勤務医のとき、医局の人事で丹後の与謝の海病院(現北部医療センター)に2年間勤務したことがあります。そこから月に1度くらい久美浜病院や伊根診療所、間人診療所、五十河診療所などに応援にも行きました。雪深い中、わずかの設備しかない診療所で月に1度の診察を待ち遠しく待っておられた高齢の患者さん達のことは、今でもよく覚えています。過疎地の医療にじかに触れた経験はその後の人間形成にも役立ちました。また都会生まれの私は、青い海と白い砂浜、カニや蛍に恵まれたこの地の美しさに魅了され、穏やかに過ぎゆく時の流れと人々の深い情に幾たびも癒されたことを思い出します。私が彼の地の人々を治療したのではなく、私が癒されたのでした。またこの地を訪れたなら、何らかの形で恩返しをしたいものです。過疎地での経験は人生に役立ちます。若者よ、北部に行きましょう。
我々には自由開業制に代表される自由度が与えられていますが、それはそうすることで医療が最も適切に行われると認識されているからでしょう。しかし医師偏在が許容度を超え、かつ誰も有効な策を打ち出せないのなら、この原則は覆るかもしれません。自由とともに責任も与えられています。ダーウィンのSurvival of the fittest. 適応できるものが生き残る。ニーズを的確にとらえることが大切です。
新専門医制度が医師偏在の問題にどのように絡んでくるのか、まだ見えてはいません。この制度の当初の案は、大病院を中心にした内容であったため、地域医療崩壊の危機を感じ取った協会や各方面が働きかけた結果、制度の実施は1年延期され、2018年度開始となりました。そこでは医師の都市部への偏在を緩和する方向に軌道修正されています。地域医療を守るのは私たちです。