トラブル予防のためのポイント解説 雇用管理講習会開く  PDF

協会は、12月22日に『医院経営と雇用管理2016年版』(保団連発行)をテキストとして、「知っておきたい医院のための雇用管理講習会」を開催した。講師はテキストの全体監修者である桂好志郎社会保険労務士。参加者は9人。

従業員と信頼関係築くために
桂氏は、雇用問題はトラブルが起きなければ医院経営にとって影響は少ないが、ひと度起こると診療どころではなくなるので、大きな問題にならないよう予防をしっかりしてほしいとした。
従業員と信頼関係を築くためには、まず最低基準を定めた労働基準法を守ること。従業員とは必ず雇用契約書を締結し、10人以上従業員を雇う場合は就業規則の作成・周知をすること。さらに雇用者も従業員も就業規則の運用ルールを守ることである。
現役のサラリーマンにとって最も関心が高いのは「年次有給休暇の取得実績」と言われている。従業員の定着を望むのであれば、医院においても「年次有給休暇」は重視すべき。採用して6カ月経過し、全労働日数の8割以上出勤した全従業員が対象になる。お盆休みや年末年始の前後、学会などで休診する場合に「年次有給休暇」を計画的に付与して、診療に支障のないようにしたい。
賃金について、人件費は少しでも少ない方が良いという考えがあるが、従業員のやる気を引き出すために上手に使うことを意識してほしい。基本給は世間相場並みにする。昇給・賞与・退職金を有りとする場合はしっかりと明記し、他院との差別化を図ると良い。

解雇トラブルに注意
パートタイム労働法改定により、有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えた時は、労働者の申し込みにより、期間の定めがない労働契約(無期労働契約)に転換できることになった。有期契約は解雇しやすいと思われがちであるが、期間の定めのない労働契約の場合よりも解雇の有効性は厳しく判断される。今後医院でもトラブルが発生する可能性は高い。
介護休業制度改定では、2017年1月1日より対象家族の範囲が拡大され、祖父母、兄弟姉妹、孫についての同居・扶養要件が不要になった。また、対象家族1人につき3回を上限として通算93日までの分割取得が可能となった。今後、制度を利用する従業員が増えてくることが予想される。

『医院経営と雇用管理』の活用を
最近、助成金の申請サービスを謳う民間企業や社労士事務所が現れているが、実際に助成金を申請する際に計画書や就業規則が必要になり、その作成に別途料金を取るというケースも多いので注意してほしい。表題を変えただけでどこでも使える就業規則を作られ、後になって問題になることもある。就業規則を作成する場合は、自院の実態に合わせることが重要。
参加者からは「従業員に年次有給休暇を取ってもらうと日常業務が回らなくなるが、どうしたら良いか」などの質問が出された。桂氏は、医院はどこもギリギリの人数で経営していることが多いが、必要経費だと割り切り将来的には0・5人分程の余裕をもって従業員を雇うことも考えてほしいとアドバイスした。また、時効になった「年次有給休暇」を買い取ることや(「年次有給休暇」は実際に休むことに意味があり、現実に付与しなければいけない。あくまで、法を上回って付与する分や時効によって消滅する分などの買い上げが違反ではないことに注意)、シフトを組む前に事前に申請してもらうなど、運用ルールを明確にしておくことも大切。さらに、計画的付与は労使協定を締結することが必要とした。
本紙2985号に同封してお送りしている『医院経営と雇用管理2016年版』に、労働条件通知書の記入例、就業規則のたたき台、年次有給休暇の計画的付与に関する協定の参考例、その他医院経営に必要な情報を掲載しているので、参照いただきたい。ご質問やお問い合わせは、協会事務局まで。

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