第6回開業医フォーラムは、来る10月の保団連医療研究フォーラムで採択を目指す「開業医医療復権・京都宣言」に向け、京都協会としての政策分析・評価の到達を確認・整理し、会員諸氏との意見交換を深める機会と位置付け、6月25日に開催。参加者は20人となった。
フォーラムでは、まず渡邉賢治副理事長より「ついに出た! 保険医定数制! 自由開業制見直しの動き」と題し、「新専門医制度」をめぐる動き、厚労省の「医療従事者の需給に関する検討会」を通じて浮上してきた「保険医定数制」や「自由開業制見直し」等、「医師に対する規制」について、最新の情報も踏まえつつ報告した。
続いて、事務局から、「開業医たちの戦後、保険医協会の原点を探る」と題して報告。国民皆保険が解体局面にある今こそ、「保険で良い医療」と「保険で良い医業」の確立を目指し取り組んできた保険医運動、さらには保険医協会の原点に光を当てようと、協会発足から国民皆保険の達成、制限診療の撤廃までを射程に、その歴史を俯瞰した報告を行った。
基調発言では、「京都協会はなぜ、『開業医医療復権・京都宣言』をつくるのか?」と題して、垣田さち子理事長が発言した。
低医療費で質の高い医療を実現
基調発言では、日本の医療制度が世界一とされる所以は、主に医療の質・アクセスが極めて高く、それに比して医療費が低いことにある。これを実現しているのが開業医である。日本では、誕生から老年期に至るまで、ライフステージごとに公的健診制度が網羅され、低い負担で健診を受けることができるとした。
また、町の開業保険医は、出生から看取りまでを診る「かかりつけ医」であり、「家庭医」の役割を果たしている。なおかつ、専門医が地域で開業し、大病院に行かずとも、手軽に高機能な医療を受けることができる。アクセス面でも、すぐに受診できるアプローチの良さが早期治療につながっていて、その背景にも地域の開業医の存在があることを指摘した。
国民皆保険制度を定めた以上、国策として公的に運営されるのが本来の姿であるが、日本では医療提供は民間に任され、低医療費政策の下、医療者の献身的な努力の積み重ねで持ちこたえてきた。経営者でもある医師が、患者の求めに敏感に反応して、制度のコスト管理も請け負いながら診療している。
地域包括ケアシステムの要として、開業医にかかる期待は増しているようだが、現状の開業医への評価へは結びついておらず、新たな医師養成の方向が模索されている。だからこそ、日本の医療の何が良くて、何が足りないのか。医療現場からの声を届けて議論に参加していきたいと述べた。
医師の裁量狭まる危険性に警鐘
出席者からは、「今また、地域差をつくるような政策が進められている。都市集中、地方衰退で、医業が成り立たない地域が生まれてしまった現実を、助長するような政策が進んでいるのではないだろうか」「日本の医療制度は患者にとっても医師にとっても素晴らしい。しかし、医療側が財政問題を議論してこなかったことは問題だ」「地域で患者を診ているからこそ、見えてくるものがある。現場感覚の大切さを感じている」など、現状を憂う声や課題を指摘する声が出された。
最後に、吉村陽理事から、「市中の病院から医師が消えていく」問題があるとともに、協会が早くから指摘してきたように医師としての自由度が奪われていく危険がある。まだまだ議論を積み重ねていかなければならないと述べた。
宣言骨子を提案する垣田理事長