2016診療報酬改定こう見る(3)
在宅医療
保険部会理事 吉河正人
どこまで複雑にする気か?!
在宅医療分野における今次改定の印象を一言で言うなら、「どこまで複雑にしたら気が済むの」であろう。
前回の改定で行われた、「同一建物居住者」に対する理不尽な管理料の減額は、改善されるどころかますますわかりにくくなった。
「同一建物」から「単一建物」に呼称が変わったが、協会が続けてきた「管理料は、患者さん一人ひとりについて、個別に行う治療計画に基づいた全身管理に対する対価であり、居住する建物が同じか否かは関係がない」との主張は、残念ながら実を結ばなかった。
月に1度だけ訪問診療した場合でも算定できるようになったり、重症度により差をつけるというような、一定理解できる方針も垣間見えるが、根本が是正されていない。
同様に、有料老人ホーム、グループホームやサービス付き高齢者専用住宅(サ高住)を含めて、施設入居時等医学総合管理料(施設総管)とし、アパート、マンション等の一般集合住宅と別立てとなったことも理解できるが、単一建物における患者数での点数差別は許されるものではない。人数設定の「2〜9人」は、グループホームの1ユニット定員を意識したもので、姑息の一言に尽きる。是正に向け粘り強くアピールしていきたい。
確かに、訪問診療料が一部改善されたこと、在宅自己注射指導管理料の改善、在宅療養指導管理材料加算の新設、グレーゾーンにあった訪問看護師による採血検体検査や配置医師勤務日以外の特別養護老人ホーム等勤務看護師の医療行為に要した薬剤等が算定可能となるなど、現場の声を反映した評価に値する内容も見られる。
在宅医療、介護の人材不足が深刻化している現実を踏まえ、更なる現場の声を反映した改善がなされるよう、今一度気を引き締めて取り組んで行きましょう。なお一層のご支援をよろしくお願いいたします。
内 科 保険部会理事 藤田祝子
キーワードは「かかりつけ」
今回の診療報酬改定で、開業医に求められることを一言でいうと、「かかりつけ」機能を充実させるということである。
中心となるテーマは地域完結型医療を推進し「地域包括ケアシステム」の構築を促進することである。急性期病院の入院評価も、診療所や薬局の「かかりつけ」機能評価も密接に絡んでいる。基本は地域の「かかりつけ」医が「ときどき入院ほぼ在宅」をコーディネートする役割を担い、入院も専門医療も在宅医療も、かかりつけ医が交差点で交通整理をする役割を担うことを狙っている。
急性期病院は在宅復帰率が強化され、地域の病院には回復期機能と在宅支援機能を担うべく地域包括ケア病棟への誘導が図られ、「かかりつけ」機能強化として地域包括診療料・加算の見直しや「かかりつけ」薬剤師、薬局の評価が新設された。在宅医療に関して言えば、「かかりつけ」との連携が強く打ち出されている。居宅における重症患者診療などの評価、在宅医療専門診療所の公認に伴う施設要件などが注目される。
となると、急性期などの病院は入院患者獲得のみならず在宅復帰機能(退院支援)強化を強く迫られ、地域連携に病院側も診療所側も積極的に取り組んでいかなければならない。「かかりつけ」機能強化を進める必要がありそうである。しかし、それを進めるには認知症ケアと小児が焦点になる。
「認知症地域包括診療料・加算」は以前より掲げられていた認知症患者を地域で診るという視点で新設された点数である。認知症以外に一つ以上の疾患を抱えている患者が対象となり、施設基準は地域包括診療料・加算と同様である。一方、「小児かかりつけ診療料」についての詳細は他の記事に譲るが重複受診の抑制を目指したものである。
今後、大病院の外来縮小(紹介状なしの追加負担は初診時5000円、再診時で2500円)や中小病院の病棟再編に伴い、連携体制の再構築が必要となる。その際、診療情報の管理や紹介状等の文書作成を効率的に行うため、電子カルテ、医療クラーク、書式テンプレートの需要が拡大することになりそうである。電子的方法による検査・画像情報提供加算が新設されたが、要件が厳しくネットワークの構築から始める必要があり、セキュリティの問題もある。
前回改定以上に「かかりつけ」機能強化を迫られる形になっており、その根本は「地域包括ケアシステム」の実現なのである。