2014診療報酬改定こうみる(6)
眼 科 保険部会理事 草田英嗣
身近な多くの手術が減点
今回の診療報酬改定も前回改定に続く「社会保障・税一体改革」路線に基づくものとなっている。2025年に向けて、「医療費の抑制」と「医療への国の支出の抑制」の方向である。
都道府県あるいは市町村単位でみていこうとする「地域完結型医療への転換」が謳われており、在宅・介護を重点的に地域の実情に応じたネットワーク構築が必要だと強調されている。減点、減点の続く眼科にとっては、今年も期待できるものではなかった。
白内障手術自体の減点は免れたものの、短期滞在手術等基本料3の設定や、硝子体手術、緑内障手術、レーザー治療等眼科にとっての重要な手術が減点となっている。初診料は12点、再診料は3点上がったのみ。検査では眼底カメラ撮影が、アナログ撮影(54)とデジタル撮影(58)に分かれ、クラミジア・トラコマチス抗原定性やアデノウイルス抗原定性などの免疫学的検査が減点となっている。
手術領域ではほとんど減点ばかりで、瞼板切除術(1580→1440)、翼状片手術(4130→3650)、結膜腫瘍摘出術(6890→6290)、眼窩内異物除去術(表在性)(9580→8240)、眼窩内腫瘍摘出術(表在性)(7640→6770)、斜筋手術(11170→9970)、緑内障手術のうち流出路再建術(21300→19020)、濾過手術(25930→23600)、また光凝固では虹彩光凝固術(7710→6620)、網膜光凝固術(通常)(11200→10020)、(その他特殊)(18100→15960)、硝子体手術(16500→15560)、後発白内障手術(1520→1380)など身近な多くの手術が減点となっている。
羊膜移植術と網膜再建術が新設され、各々6750点、69880点となった。
短期滞在手術等基本料3が設定されたため、診療所から病院への紹介の際にはその旨の患者への説明が望ましいと思われる。眼科も、今後我が国の本格的な高齢化社会の到来に対応していかねばならない。在宅・介護分野へ眼科がどのように介入していくか検討する時期にきている。
耳鼻咽喉科 山科 奥村雅史
今次改定は現状維持も 10年改定時減点復点などを希望
2014年度診療報酬改定は、全体としてプラス0・10%で決着した。しかしながら、今回の改定には消費税8%への引き上げに伴う対応分が含まれており、それがなければマイナス1・26%となる。極めて厳しい結果である。診療所における診療科別に見ると耳鼻咽喉科は皮膚科に次いでプラス改定になっている。耳鼻咽喉科は処置中心の科であるが、処置の点数がこの数年ほとんど大きな変化はなく、そのため全体に占める診察料の構成比が大きくなってきている。消費税対応の初・再診料の引き上げが、わずかなプラスを生んだものと考えられる。
細かく見ると、減点されているのもいくつかある。
外耳道異物除去術複雑が790点から710点に、耳介腫瘍摘出術が5320点から4730点に、外耳道腫瘍摘出術が6530点から6330点に減額されている。また、副鼻腔の手術に関しては、内視鏡下鼻・副鼻腔手術が新設された。手術内容によって1型〜5型に分けられるが、㈸型に関しては施設基準に沿って近畿厚生局に届け出た場合のみ算定できるとなっている。その基準とは、耳鼻咽喉科の経験が5年以上ある常勤医が2人以上、脳外科医あるいは眼科医も5年以上の経験のある常勤医がそれぞれ1人以上配置されていて、緊急手術可能な体制があることである。小規模の市中病院では不可能であろう。現在、副鼻腔手術の多くが内視鏡下で行われており新設の項目は保険請求が分かりやすくなったが、一方従来の鼻茸摘出術や上顎洞篩骨洞根治術その他数種の手術点数が半減されたことは、大きなマイナス面である。
今回の改定は耳鼻咽喉科としてはほぼ現状維持であるが、今後の希望としては、2010年に減額された標準純音聴力検査(400点から350点)、喉頭ファイバースコピー(620点から600点)の点数回復。また、外来管理加算より低い処置点数の是正。対称器官に係る処置は片側ごとに算定できることなどが挙げられる。
今後の耳鼻咽喉科診療においては既存の点数を取りこぼしのないようにすべきである。