2014診療報酬改定こうみる(3)  PDF

2014診療報酬改定こうみる(3)

在宅医療/保険部会理事 吉河正人

憤懣やるかたない訪問診療改悪

 今次改定は、在宅医療にとって憤懣やるかたないものとなった。

 同一建物居住者を、同じ日に複数訪問診療した場合の扱いが、理不尽という以外の何物でもない形に改悪されたのである。

 訪問診療料に差をつけることについてはある程度理解できていたが、さらに引き下げられ、一軒一人だけの場合に比して実に8分の1という低点数となった。

 これにも増して、到底許されない改悪は、在宅時医学総合管理料に同一建物居住者とそれ以外の場合で差をつけたことである。

 患者さんひとりひとりについて、治療計画を立て、全身管理を行っていくことに、住んでいる建物が同じであるか否かなど全く関係がない。

 全国保険医団体連合会をはじめ、諸団体より「直ちに修正するように」との要請がなされているが、当然のことであり、さらに強く訴えていきたい。

 呆れ果てたことに、これらの要請の後に出された通知で、同一建物居住者を複数訪問診療した場合に添付せよという書式が現れた。ひとりひとりについて、要介護度、認知症の日常生活自立度を記載し、さらにその日に同一建物で診療した患者全員の氏名、診療時間、診療場所等までを一覧表にせよというものである。全く関係のない他人のカルテに氏名等が残されてしまうことになる。個人情報保護はどうなるのか? 怒りを通り越して馬鹿馬鹿しくなった。在宅推進とは全く逆の方向である。この添付書類は、「訪問診療対象患者に一定の枠をはめる」ための資料に使われるのかもと推察する。

 この改悪のため、強化型でない支援診療所、支援病院を対象とした「実績加算」新設や、支援診療所、支援病院を届け出ていないところの諸点数引き上げ等、評価できる改定部分が吹き飛んでしまった。

 修正が実現するまでは、時間と燃料費をかけて対抗手段をとるしかないと、訪問計画を練り直しているところである

内科/保険部会部員 佐々木善二

地域包括診療加算に問題点あり

 今回の診療報酬説明会に出席した事務の人が、多くの診療所に関係があって気になったのはこれだけでしたと示してくれたのは、再診料の地域包括診療加算(1回に付き20点)だった。

 日ごろの診療で人間ドックや職域の検診結果などを持参し、これを見て下さいと言われることはよくある。内容を見て必要な項目をカルテに書き写し、その患者さんの経過を見ていくのに必要な検査も、検診結果で代用することがよくある。また他科も受診されている人が今回こんなお薬をもらいましたと来院された時、痛み止めと一緒にこちらですでに投薬をしている胃薬も処方されていることが分かり、こちらの処方を中止することもある。逆に驚くほど多項目の検査結果を見せてもらっても、必要な検査が抜けていて、訳を話して検査をお願いすることもある。また、ご自身よりも身内の方から家庭での生活が少しおかしくなったと訴えがあり、認知症専門医への紹介とともに介護保険の認定手続き方法などもお話しすることもある。

 このような対応をしてきた経過もあり主治医機能(かかりつけ医)を評価するものとして、高血圧症、糖尿病、脂質異常症、認知症の4疾病の内二つ以上を有する患者さんへの地域包括診療加算は一定の評価ができる。しかし、本来は4疾病のうち、一つでも有する患者さんすべてを算定対象にすべきだ。投薬料の7剤制限の対象から外れるというメリットもある。

 いくつか問題点もある。算定の要件に院内表示があるが、これはすべての患者さんが読む。時間外対応加算2を算定している場合、午後10時までの対応でいいとされているが、すべて24時間対応可と誤解される恐れもある。

 介護保険制度に関する認定要件の一つとして介護認定審査会参加があるが、開業医はこの要件のみ該当するのが大半なので緩やかな基準で判定されることを願う。

 かかりつけ医として、この加算の意図を頭においておくことは、少なくとも患者さんにとっては悪いことではないだろう。

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