2014診療報酬改定こうみる(5)  PDF

2014診療報酬改定こうみる(5)

小児科 伏見 川勝秀一

在宅医療推進を意図した改定に

 今回の改定では、小児、特に新生児においても在宅医療に移行を促す内容になっていると思われる。

 新生児特定集中治療室退院調整加算3が新設された。これは「前医で新生児特定集中治療室退院調整加算2を算定している患者について、転院受け入れ後7日以内に退院支援計画を策定した場合、入院中1回に限り算定する。自宅へ退院した場合、退院時1回に限り算定する」もので、NICUから自宅へ退院する際にいったん別の病院に転院してからの退院をしやすくするもの。条件・施設基準がある。

 在宅療養指導管理料が算定しやすくなった。これまで在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院からの患者の紹介を受けた医療機関が、在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院が行う在宅療養指導管理と異なる在宅療養指導管理を行った場合に紹介月に限りそれぞれ在宅療養指導管理料を算定できたが、これに加えて15歳未満の人工呼吸器を装着している患者または15歳未満から引き続き人工呼吸器を装着しており、体重が20�未満の患者に対して、在宅療養後方支援病院と連携している医療機関が、それぞれ異なる在宅療養指導管理を行った場合にはそれぞれ在宅療養指導管理料を算定できることとなった。

 在宅療養後方支援病院は在宅医療を行うに当たり、緊急時における後方病床の確保のために新設されたもので、当該医療機関が後方受け入れを行った場合、これまでは連携している在宅療養支援診療所または在宅療養支援病院が算定できた在宅患者緊急入院診療加算を算定できるようになった。施設基準として、200床以上の病院で入院希望患者について緊急時にいつでも対応し、必要があれば入院を受け入れなければならない。

 在宅患者共同診療料も新設された。在宅療養後方支援病院について、在宅医療を担当する医師と共同で訪問診療等を行った場合の評価を行うとされている。

 小児科外来診療料を届け出ている診療所が、病院で在宅療養指導管理料を算定している児の在宅療養を診ている場合は出来高となり、在宅患者訪問診療料などを算定できるようになった。またシナジスの注射をした場合も小児科外来診療料の対象から外れることになった。

 小児の在宅診療を推進しようという意図はわかるのだが、実際訪問診療をしている医療機関が少ないこと、シナジスは算定の要件が複雑で価格が高いこともあって今回の改定だけで思うような方向へ誘導することは難しいと考えられる。今回の改定は一般小児科にとって影響は少ないと思われる。

産婦人科 乙訓 山下 元

日常的な手術料が大幅切り下げ 強い不満広がる

 2年前の改定で「平成26年3月31日までに、病院だけでなく有床診療所も管理栄養士と契約したうえでの栄養管理体制の届出が必要」とされた。ここに求められるのは管理栄養士で、厚生労働大臣の免許を受ける国家資格である(「栄養士」は知事の免許)。契約が間に合わない場合は入院を受けても入院とは認められず、入院基本料の算定が不可となる。しかし管理栄養士はすぐ雇えるわけではない。栄養体制確立への厚労省の強い姿勢に対し、産婦人科で生じた現象は、有床を返上してお産から撤退する動きであった。産科医療過疎地域は管理栄養士も少ない。思わぬ事態に、厚労省はこの方針を撤回せざるを得ないはずという観測も流れたが、修正の発表はなく、今回の改定を迎えた。

 「有床診療所の入院基本料を11点下げる。栄養管理を評価し12点加算する」(管理栄養士がいなくても入院基本料の算定を可とするが、その場合は入院点数を11点下げる。代わりに栄養管理実施加算を届け出ると12点加算できる)となった。「栄養管理の入院料への包括」は「見直し」ということだが、反古と決まっていたのならもっと早く公報してほしいものであった。

 また、帝王切開術の点数が大幅にダウンした。厚労省は手術点数を外保連試案を参考にして決定していると記載している。外保連試案(本年分は8・2版)とは外科系学会社会保険委員会連合が作成している手術の料金表の本で、詳細に材料費、熟練度、人件費などが記されている。この中で帝王切開の所用時間が(8・0版の)2時間から(8・2版の)1時間に変更となっていた。いきおい人件費等の見積もりが下がり、手術料が安くなり、厚労省の点数切り下げに至ったとの話である。手術時間が短縮されたら、手術の謝礼は高くなるような気もするのだが、それはさておき、今回の改定では「汎用される手術点数は据え置かれている傾向」(保団連)という中で、産科の最も日常的な手術点数がよりによって大きく切り下げられた。数年前、「危機的な産科医療を守る」とのかけ声でにぎやかに引き上げられた点数は何だったのか。今回は静かに機械的に下がった。理屈はともかく産科医には強い不満が広がっている。

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