2014 診療報酬改定こうみる(2)  PDF

2014 診療報酬改定こうみる(2)

入院  副理事長 渡邉賢治

病 院 「地域完結型」先取りした改定

 今回の診療報酬改定は、現在国会で審議されている「医療・介護総合推進法案」の目指す「地域完結型」医療を先取りした改定内容となっている。入院医療に関して最もターゲットになったのが、一般病棟7対1入院基本料である。現在約36万床ある7対1入院基本料算定病床を、今年度だけで9万床削減する計画である。そのために、(1)長期入院患者に対する特定除外制度の廃止(2)重症度・看護必要度の名称と項目内容の見直し(3)自宅等への退院患者割合75%以上(4)短期滞在手術等基本料3の対象拡大と、対象患者の平均在院日数計算対象からの除外(5)データ提出加算の届出の要件化—など算定要件の厳格化等を行った。経過措置終了の9月末までに、「自宅等」への退院患者割合の要件を満たすために、在宅復帰機能を持つ病棟や介護施設の確保が必要となる。

 7対1入院基本料を算定する病棟を削減した上で、高度急性期病床から慢性期病床、そして在宅へと「川上」から「川下」へ、時に逆流のある中、効率よく患者を流すために、急性期医療機関からの患者や病状が悪化した在宅患者の受け皿が必要となる。この機能を担う病棟の役割を評価する点数として「地域包括ケア病棟入院料」、「地域包括ケア入院医療管理料」が新設された。

 「川上」から「川下」への流れは、慢性期にあたる療養病床でも促進され、在宅復帰率50%以上、病床回転率が10%以上であることを要件とする在宅復帰機能強化加算が創設された。

 また、一般病棟7対1入院基本料に加えて、新設された地域包括ケア病棟入院料等にもデータ提出加算の届出を要件とした他、データ提出加算が特別入院基本料等を除く全病院で届出可能とされ、回復期・慢性期を含む診療内容に関するデータの収集に乗り出し、今後活用されることは必至だ。

 このような急激な入院医療提供体制の再編が多くの入院難民を生むことが非常に危惧される。

 栄養管理体制に関しては見直しが行われ、経過措置が2014年6月30日まで3カ月間延長された。経過措置後は、非常勤の管理栄養士または常勤の栄養士が1人以上配置されている場合、入院料の所定点数から40点控除した点数を算定。非常勤の管理栄養士、常勤の栄養士のいずれも配置できない場合は、特別入院基本料へと入院基本料の減算となる。この入院基本料の減算は、2012年改定で上乗せされた点数を大きく上回るものであり、さらなる再検討を要望していきたい。

有床診療所 要件満たさないと評価依然低く

 今回の診療報酬改定で、有床診療所は複数の機能を果たすことが求められ、特に地域包括ケア要件を満たす医療機関を高く評価し、入院基本料が6区分に設定された。旧有床診療所入院基本料1〜3は4〜6に、地域包括ケア要件を満たすものは有床診療所入院基本料1〜3となった。必要な看護職員配置数は有床診療所入院基本料1と4、2と5、3と6がそれぞれ同じで、それらの違いは地域包括ケア要件を満たすかどうかである。地域包括ケア要件は、(1)在宅療養支援診療所であり、過去1年間に訪問診療を実施した実績がある㈪過去1年間の急変時の入院件数が6件以上(2)夜間看護配置加算1または2を届け出ている(3)時間外対応加算1を届け出ている(4)過去1年間の新規入院患者のうち、他の急性期医療機関の一般病棟からの受け入れが1割以上(5)過去1年間の看取りの実績が2件以上(6)過去1年間の全身麻酔、脊椎麻酔、硬膜外麻酔(手術実施の場合)の患者数が30件以上(7)医療資源が少ない地域の有床診である㈷過去1年間に介護保険のリハビリ、居宅療養管理指導、短期入所療養介護の実績がある、または居宅介護支援事業者である(8) 過去1年間の分娩件数が30件以上(9)過去1年間に乳幼児加算・幼児加算・超重症児(者)入院診療加算、準超重症児(者)入院診療加算又は小児療養環境特別加算を算定したことがある—の11項目で、二つ以上該当する必要がある。また、有床診療所入院基本料1〜6の全てで、医師配置加算、看護配置加算、夜間看護配置加算が届出可能になり、さらに看護補助配置加算1、2が新設された。

 有床診療所における管理栄養士配置義務化は廃止され、栄養管理実施加算が復活した。これに伴い有床診療所入院基本料4、5(旧1、2)、有床診療所療養病床入院基本料は2012年の改定以前の点数まで引き下げられた。しかし、栄養管理実施加算を届け出た場合は、管理栄養士による入院栄養食事指導料が算定できなくなる不合理点が新たに生まれた。また、管理栄養士配置の義務要件は撤廃されたが、入院患者に対する栄養管理体制は引き続き整備が必要なので、ご留意いただきたい。有床診療所をある程度評価しているというものの、消費税増税に伴い、入院基本料は引き上げられたが、有床診療所入院基本料6以外は増税対応分を除く点数引き上げはなく、地域包括ケア要件を満たさない有床診療所の評価は依然低い。さらに改善を求めていきたい。

ページの先頭へ