2012診療報酬/改定こうみる7
精神科
不明瞭な基準設定で混乱/
初診日の通院・在宅精神療法
京都精神科医会理事 岩瀬則文
今回改定の特徴は、精神科救急、身体合併症、認知症などについて精神科とその他の診療科との連携をより促進する方向で新設や増点がされていて、これは前回の改定をほぼ踏襲するものである。背景には、認知症が増加していて、またうつ病や思春期の患者などが、一般医療と重なり合うこともしばしばあり、むしろ今まで精神科は他科から隔絶されてきた印象があるので、連携は今後もますます大切であると思われ、この方向性は評価したい。
精神科リエゾンチーム加算が新設されたので、総合病院での活動が期待される。
認知症では、初期の診断・管理・指導で連携を促し、在宅で問題行動を起こした時に必要となる短期の入院料が増点され、夜間対応加算、夜間ケア加算が新設されるなど、幅広く評価された。
さて大きな混乱を来たした項目は、初診日の通院・在宅精神療法の算定要件である。地域の精神科救急医療体制の確保に協力等を行っている精神保健指定医は500点から200点増点、これ以外は100点減点となった。唐突に出てきたこの規定は、基準が不明瞭で、しかも時間外、休日又は深夜の診療協力やオンコールなど診療所にとってはハードルがあまりにも高い項目が並んでいる。診療所の医療が軽視されているのではと思ってしまう。さらに精神科病院に勤務する医師でも算定できにくくなっていて、こうなると実質減点でいったい何のためなのか釈然としない。同等の専門的治療に対して恣意的に格差をつける根拠も説明されていない。このような案を堂々と提出されると、今後の厚労省が実施する改定に対して危惧を抱いてしまう。
皮膚科
皮膚科医療の正当な評価を
新たな治療法の保険適用もなく
理事 山田 一雄
今回の改定では、目立った新たな治療法が保険診療に取り入れられることもなかった。また、処置や検査において増減点はあったものの、皮膚科診療所にとっては、全体としてあまり変化のない改定内容であったと言えよう。以下、点数の細部を見ていきたい。
処置においては、いぼ焼灼法・いぼ冷凍凝固法が前回改定で不当にも10点下がったままであり、それなりに手間のかかる処置であり、多数個の場合には、それに見合う点数の改善を希望したいところである。皮膚科光線療法では、中波紫外線療法が10点引き下げられた。また、皮膚レーザー照射療法では、色素レーザー照射療法は変更なかったが、Qスイッチ付レーザー照射療法は照射部位の面積により内訳が細分化され、16未満では引き下げられたが、16以上では点数が引き上げられ、面積の広い部分については一定評価ができる。さらに、新設された稗粒腫摘除では10カ所未満74点、10カ所以上148点とされ、面皰圧出法の49点と比べると高く評価されている。
皮膚科の手術においては、部位が露出部であることも多いが、今回、露出部の定義において「足底部を除く」が削除されたことで、足底部についても真皮縫合加算の算定が可能となった。
検査では、細菌顕微鏡検査が10点引き上げられた。ウイルス抗体価とアレルゲン刺激性遊離ヒスタミンが減点された。またパッチテストやスクラッチテストの点数は変更されなかったが、皮膚科外来で行うことが多い検査であり、検査の手間や検査薬のロスなどを考えるともう少し評価されても良いのではないかと考える。
今後は、これまで引き下げられた点数を元に戻すなど、皮膚科医療の正当な評価を望みたいところである。