2012診療報酬/改定こうみる6  PDF

2012診療報酬/改定こうみる6

眼科

無床開業医にとっては厳しい引き下げ

理事 草田英嗣

 「社会保障・税の一体改革成案」の実現に向けた最初の第一歩、と位置付けられた今回の改定は、眼科にとってはやはり期待できるものではなかった。減点、減点の続く眼科では、日常診療における主要な眼科学的検査の復点を期待したが、静的量的視野検査(片側)(300→290)、調節検査(74→70)、角膜形状解析検査(110→105)とさらに引き下げられた。しかし眼科にとっての最大の課題であった白内障手術は、減点を噂されながらもなんとか踏みとどまった。

 多大な労力と時間の要する小児眼科関連検査は努力が実り増点となり、両眼視機能精密検査、立体視検査(三杆法又はステレオテスト法による)、網膜対応検査(残像法又はバゴリニ線條試験による)はそれぞれ(38→48)となった。色覚検査のうち、アノマロスコープ又は色相配列検査を行った場合は(60→70)に、それ以外の場合は(38→48)となった。またロービジョン検査判断料(250)が新設されたが、一定の施設基準が示されている。また眼底カメラ撮影では自発蛍光撮影法の場合(510)が新設された。また広角眼底撮影加算(+100)は未熟児網膜症、網膜芽細胞腫又は網膜変性疾患が疑われる3歳未満の乳幼児との条件が付く。

 手術に関しては、斜視、涙道、眼窩、硝子体領域と比較的幅広く、増点となっている。しかし内容は比較的大がかりな病院等で行われるような手術に重点が置かれ、今回の改定でも日帰り手術等をしていない無床診療所には厳しい結果となっている。眼科や皮膚科は改定のたびに逆風を受け、ぎりぎりのところまで来ているように思われる。多くの手術の中でも、白内障手術は技術の進歩が目覚ましく、より短時間でより完成度の高い手術となってきている。手術時間が短いため、他科の医師や患者側から「簡単な手術」という大きな誤解を受けている。多くの先輩たちの血と汗と努力で培われてきた技術の結晶である白内障手術は、視機能の回復に伴う多くの患者のQOLの改善効果では類を見ないものであるのに、白内障手術から手を引いている病院もあると耳にするのは残念である。今後の増点を期待したい。

耳鼻咽喉科

頻度高い検査の減点の影響危惧

京都府耳鼻咽喉科専門医会保険担当理事 児嶋久剛

 従来、耳鼻咽喉科は検査と処置の科と考えられていたが、最近の診療項目別点数構成比を見るとそれらの構成比はそれぞれ17〜18%であり、その一方で診察料が40%強を占めている。診察料の増減が診療報酬に大きく影響するようになっているわけであり、今回の点数改定で再診料の引き上げが見送られたことは非常に残念であった。その他の項目を見ても耳鼻咽喉科に関して、とりわけ診療所においては大きな改定のなかった年といえる。

 検査での変更点を見てみると、D017細菌顕微鏡検査、D018細菌培養同定検査、D019細菌薬剤感受性検査、D019-2酵母様真菌薬剤感受性検査がそれぞれ増点されていることは菌検査の機会が多い耳鼻咽喉科にとって有利であったといえる。また、D237終夜睡眠ポリグラフィーで多点感圧センサーを有する睡眠評価装置を使用した場合(250点)の新設や、脳波検査判断料の増点、D250平衡機能検査の頭位及び頭位変換眼振検査で赤外線CCDカメラ等による場合が新設されたことなど専門性を評価された分野がある反面、D247他覚的聴力検査又は行動観察による聴力検査の鼓膜音響インピーダンス検査やチンパノメトリーが減点されたことは残念である。これらは耳鼻咽喉科としては検査頻度が高いだけに減点の影響が危惧されるところである。

 今回の改定では手術料の大幅な引き上げがみられる。ただし、その増点は難易度に応じたものであり、診療所レベルの手術料についての引き上げ効果は少ない。診療所レベルで行える手術としてK331-3下甲介粘膜レーザー焼灼術(両側)が新設された。そのほかの大きな変更点は同一手術野の手術料である。耳鼻咽喉科では摘出術と再建術を同時に行う手術が多くあり、これらは従来一方が100分の50の減額算定になっていたが、今回これが100分の100に改定された。手術医療機器等加算の項目で、K170経耳的聴神経腫瘍摘出術やK457耳下腺腫瘍摘出術、K458耳下腺悪性腫瘍手術の際の神経モニタリング(K930)やマイクロデブリッター(K934-2)の機器加算が新設された。中でもマイクロデブリッターはその使用が診療所でも増えているが、高価なディスポの刃が保険請求できないことが問題であった。これらは日本耳鼻咽喉科学会を通じて永年要望していた項目でもあり、評価できる。

ページの先頭へ