2010診療報酬改訂こうみる(4)

2010診療報酬改訂こうみる(4)

外科/高度な手術料引き上げは勤務医改善につながるか

理事 林 一資

 今回の診療報酬改定では、創傷処理等をはじめ、診療所で汎用される手術料は概ね据え置かれた。主に病院で行う手術については、約1800項目のうち900項目にわたる点数が引き上げとなった。

 改定の基本方針である「救急、産科、小児、外科等の医療再建」と「病院勤務医の負担軽減」に基づき、外科系学会社会保険委員会連合の「手術報酬に関する試案第7版」の中で最も難易度が高いと評価されている手術群(技術度区分E)を5割、その次の難易度の手術群(技術度区分D)が3割引き上げられた。このような大幅な手術料の引き上げは、今回が初めてといえる。

 〈技術度区分D〉(1)経験年数:15年、(2)対応する身分:Subspecialty領域の専門医もしくは基本領域の専門医更新者。

 〈技術度区分E〉(1)経験年数:15年、(2)対応する身分:特殊技術を有する専門医。

 また、腹腔鏡下肝切除術、肝門部胆管悪性腫瘍手術及びバイパス術を併用した脳動脈瘤頸部クリッピングなど、約80項目の新規手術が保険導入された。

 これら手術点数の引き上げは、外科系の厳しい勤務状況や訴訟問題などで、外科医不足が深刻な中、一定の配慮がなされたものと思われる。しかし、あるアンケート調査によれば、「診療報酬を引き上げても、勤務医個人の収入が増える保障はなく、病院経営の補てんに使われるだけだ」「病院増収のために、手術が余計に増え労働環境が悪化する」など、今回の改定の思惑との逆行を指摘する声もある。今後は、報酬が医師に直接支払われるシステムの導入なども検討される必要があると思われる。

内科/今次改定、開業医は蚊帳の外

部員 佐々木善二

 今回の改定の中で改善と評価できるのは、外来管理加算の5分間ルールが廃止され、診療録に時間OK等の文言が不要となったことだ。一方、再診料が改定され、診療所(▲2点)と200床未満の病院(+9点)が同一の69点になった。病院の増点は評価できる。再診料は初診料と並んで診療報酬の根幹であり、ある意味、最低賃金制に相当するものである。安易に引き下げが認められるものではない。内科に限らず診療所は初期治療で、疾病の重症、軽症を見極め、二次医療機関への転送を判断する技術料としての評価を認められるよう、強く訴えたい。

 診療所の地域医療貢献加算3点(要届出)は点数上、再診料2点引き下げに見合うものとなっている。しかし、標榜時間外であっても、緊急病変時等においては患者からの電話相談のみならず、診察、往診などの実際の対応も求められている。脳卒中や心筋梗塞など一刻を争う処置を必要とされる疾患に対する対応の遅れは、後から患者とのトラブルの原因となりうるので十分対応ができるか考えて届け出るべきである。

 個別にみると、肝炎インターフェロン治療計画料700点(要届出)と肝炎インターフェロン治療連携加算50点がC型肝炎の公費負担もあり、病診連携を図るため新設。認知症の病診連携を図るため、認知症専門診断管理料500点(要届出)、認知症専門医療機関連携加算50点が新設。静脈採血料2点の引き上げ、外来迅速検査加算5点の引き上げ(5項目まで算定可)、検査部門を持たない診療所では、血液検査を行わずに尿検査を行った際のみ算定可。喘息運動負荷試験800点が新設、皮下連続式グルコース測定(一連につき)700点が新設(要届出)、消化器ファイバースコピー、狭帯域光強調加算200点が新設。拡大内視鏡を使用することが必要。がん患者リハビリテーション料(要届出)が新設。内視鏡胃・十二指腸ステント留置術新設。幽門狭窄などに対し、有効な処置にも関わらず、いままで算定不可。

 今回の改定では、一般の内科開業医には関係のない領域で点数の新設や引き上げが目立っている。

明細書発行の義務化について、特に診療所に確認いただきたい事項を本号付録に掲載。

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