16年度改定 新たなアウトカム評価導入の動き「効果」を求められるリハビリ
2016年度改定に係るこれまでの議論の整理(現時点の骨子)が1月13日公表された。これは、中央社会保険医療協議会においてこれまで行われた議論を踏まえたものである。本骨子の一つの項目である「2—3質の高いリハビリテーションの評価等、患者の早期の機能回復の推進について」の中に「リハビリテーションの質に応じた評価を推進するため、回復期リハビリテーション病棟においてアウトカムの評価を行い、一定の水準に達しない医療機関については、疾患別リハビリテーション料の評価を見直す」とある。これは、新たなアウトカム評価の導入を提案するものであり、非常に注目される。
リハビリ効果がなければ入院料に包括
この件は15年12月2日の中医協総会で議論された。その際、厚生労働省は「回復期リハビリテーション病棟入院料1および2を算定する病棟の一部に、入院患者のほとんどに1日平均6単位を超えるリハビリテーションを実施しているものがみられる」「1日6単位を超えるリハビリテーションを行っている医療機関であっても、3単位超6単位未満の医療機関と比べて、効果が下回っている場合もある」とし、「効果に基づく評価を行うこととし、提供量に対する効果が一定の実績基準を下回る医療機関においては、1日6単位を超える疾患別リハビリテーションの提供について、入院料に包括することとしてはどうか」という提案を行った。これは、リハビリの効果が出なければ1日6単位を超える部分については別途リハビリ料を支払わないという内容だ。
回復期リハビリ病棟の入院料には、これまでからも当該病棟から自宅等へ退院した患者の割合や、当該病棟に入院中にADLが改善した重症患者の割合といったアウトカム評価が求められるルールがあった。そこに新たなアウトカム評価が加えられようとしているわけだ。どのような手法で評価・対象とするのか詳細は不明であるが、リハビリの効果そのものと、これまで当該入院料の包括対象外であるリハビリ料をターゲットにしている点でいくつかの問題が浮上する。
「個別性」「不確実性」を無視
一つ目は、効果が上がらなかった場合(上がっていない医療機関)の一定のリハビリ料が、当該入院料に包括されるということである。包括点数は、その中の技術料や経費の算出が難しいことから、点数引上げの足かせの一つとなっており、その拡大は歓迎できない。
もう一つは、当該病棟を維持するために、効果の上がりそうにない患者にはリハビリを実施しないなどのインセンティブが働き、リハビリを実施する患者の選別、さらには当該病棟への入院患者の選別につながり、患者への不利益になり兼ねないことである。同じ疾患、障害の患者であれば同じ経過をたどる、同じように回復するというものではなく、重症度はもちろん、その状態は様々であるという患者の「個別性」を無視していると言わざるを得ない。
また、医療は「治癒」することを約束して提供されるものではない。リハビリも同様、改善することを保証して行うものではない。なぜならばリハビリの手技によってのみ患者が回復するわけではないからである。医療の「不確実性」をも無視されている。
「効果」を正しく評価可能か
仮に新たなアウトカム評価を導入するのであれば、少なくとも次のような課題をクリアする必要がある。
一つはリハビリとその対象には様々な種類のものがあり、身体的な改善度合いだけでなく、例えば言語障害や高次脳機能障害等の機能改善も評価できるスケールにより判断されること。もう一つは、効果判定と包括の対象がリハビリ料となっていることから、その「効果」を測る際に、リハビリ以外の要因による改善を除外した評価が必要なこと—である。
患者の「個別性」や医療の「不確実性」を考えると、アウトカム評価自体が医療には馴染まない。今回のように診療報酬点数表においてアウトカム評価が拡大されることが非常に危惧される。