14年度改定の狙い 全医療機関巻き込む機能再編  PDF

14年度改定の狙い 全医療機関巻き込む機能再編

外来・在宅も重点課題に

 2014年4月には診療報酬改定が予定されている。12年4月の医療・介護の同時改定から2年。どのような改定が予定されているのか、改定を巡る動きから考えてみたい。

改定の時期

 医療経済実態調査の結果が11月6日に、改定の基本方針が12月6日にそれぞれ提示された。前回改定とほぼ同時期であり、中医協総会での議論も個々の点数項目が検討されるなど具体化している。12月下旬に改定率の決定、14年2月上旬に改定の諮問・答申と、例年通りのペースで改定が行われそうだ。

改定の目玉

 14年度改定は診療報酬単独であるが、12年度改定と同様、社会保障と税の一体改革に描かれた2025年の医療・介護提供体制を念頭に置いた改定であることに変わりはない。厚生労働省の社会保障審議会・医療保険部会と医療部会がとりまとめた「14年度改定の基本方針」は、(1)基本的考え方、(2)基本方針、(3)消費税率8%への引上げに伴う対応、(4)将来を見据えた課題−の四つからなる。(2)の基本方針には「重点課題」と「改定の視点(四つ)」があり、この部分が診療報酬改定の内容に直結する。今回の特徴は、「重点課題」が一点に絞られたことだ。その一点とは「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」である。今回の改定が一体改革と密接に関連していることがわかる。

プラス改定は望めるか

 14年度の予算編成の時期にあたり、改定率を巡る動きが慌ただしい。日医などの診療側はもちろんネットでのプラス改定を求めている。地域包括ケアシステムの構築や医療機能分化・強化にはプラス改定が必要としている。厚労省も改定を進めやすいことからプラス改定にしたい立場だ。ところが今回は財務省が特に攻勢に出ている。財政制度等審議会は11月29日、麻生大臣に「14年度予算の編成等に関する建議」を手渡したが、診療報酬本体の引き下げを要求。さらに、薬価引き下げ分の本体財源化をも否定した。内閣府の経済財政諮問会議でも薬価改定による財源を診療報酬改定の財源から切り離すべきとの意見が出されている。厚労官僚からは「厳しい」という声も囁かれている。

 14年4月は、診療報酬改定だけでなく消費税率8%への引き上げが予定されている。厚労省の試算によると、引き上げに対する補填は、改定率にして1・2%(約2000億円)としている。この補填の仕方については、基本診療料への上乗せを中心とし、個別項目への上乗せも行うということで中医協総会ではまとまった(9月25日)。

 政府は、診療報酬全体の改定率を実質的に引き下げる方向で調整に入ったという(12月6日)。消費税増税に伴う補填分を含めてプラス改定となるかどうかが今後の焦点になりそうだ。改定率については、年末まで駆け引きが続く。

外来包括導入に向けた議論

 かかりつけ医機能に関する議論が早々に始まった。厚労省保険局の宇都宮啓医療課長が4月の時点でかかりつけ医機能を支援する評価を検討したいと発言したが、それに応じるかのように、日医の横倉義武会長が、人頭割にするといろいろ問題が出てくるが、一定の健康管理をするためのコストとしてはありうる、という趣旨の発言を行ったからである。

 病院団体の幹部は、横倉会長の発言に対し、口をそろえて「重い発言」としている。また中医協委員を務める安達秀樹京都府医副会長も、一定の条件が整えば包括の議論にも応じることは可能とし、中医協の白川修二委員(健保連)は一定の理解を示していただけたと診療側の発言を歓迎。外来包括点数を検討するムードが一気に高まった。

 10月9日に開かれた中医協総会では、厚労省が、議論によっては具体的な点数要件にもなり得る、主治医機能の強化に係る論点を提示。外来包括点数の対象は診療所や中小病院、対象患者は年齢に関係なく高血圧症、糖尿病、脂質異常症や認知症の患者、一元的に服薬管理を行う、健康状態を管理し健康相談ができる体制、たばこ対策を行う、主治医意見書の作成や居宅療養管理指導等の介護サービスを提供、外来から在宅までの継続した医療提供−などを挙げた。

 中医協では、包括評価そのものに対する反対意見はなく、議論を進める方向で一致した。

 また、厚労省の「専門医の在り方に関する検討会」では、新専門医制度において総合診療専門医が新たな基本領域として位置付け(4月22日)られ、近い将来、外来包括点数との関連付けも予想される。単なる包括点数の新設と考えるべきではない。

在宅医療も議論に

 在宅医療では、機能強化型の在宅療養支援診療所(病院)のうち、連携型が話題になった(6月26日)。連携型は複数の医療機関で届け出るが、医療機関単体では、緊急往診や看取りの実績が少ないところがあることが問題視された。何らかの要件強化が予想される。

 また、いわゆる患者紹介ビジネス(施設の患者を紹介し、その見返りとして診療報酬の一部のキックバックを求めること)が問題になった(9月4日)。田村厚労大臣もこれについてはきっぱり「不適切」と発言している(10月25日)。そこで厚労省は中医協へ、患者への説明と同意の確認等訪問診療料の要件強化、在宅時医学総合管理料への同一建物に係る点数の導入、療養担当規則変更による紹介料支払の禁止−を提案した(10月23、30日)。一部の不適切な行為により、地道に地域に貢献している医療機関の不利益にならないような改定が望まれる。

 一方で、訪問点滴注射管理指導料の対象を介護保険で訪問看護を受けている患者にも拡大しようとする提案がされている。実施されると、保険医協会・保団連が要望していた内容が実現することになる。

ターゲットとなった7対1病床

 入院料では、7対1入院基本料算定病床が話題の中心になっている。多いとされる7対1病床を減らし、亜急性期病床に移行させようとする議論である。7対1病床削減ありきの議論に、診療側は反発しているが、すでに7対1に対する要件強化策として、短期滞在手術基本料3の対象を拡大し平均在院日数の計算対象から除外すること、90日超の長期入院患者に係る「特定除外制度」の廃止、重症度・看護必要度の変更、DPCデータの提出義務化−が、厚労省より中医協に提案されている(11月20、27日)。

 現行、亜急性期入院医療管理料という入院料があるが、病室単位で届け出る。これを原則、病棟単位の届出に変更しようとする提案が中医協で出される(11月27日)など、亜急性期病床についても議論の具体化が進んでいる。

 病床機能の再編については、病床機能報告制度の導入など、14年度以降の医療法の改正によっても行われる見通しだが、宇都宮医療課長は、医療法改正に先行し、診療報酬改定により病床機能分化を進めていくとしている(10月頃)。次期改定は、7対1病床にとっては、存亡をかけた改定と言える。

14年改定は外来・在宅・入院の機能再編

 14年4月改定における重点課題は「医療機関の機能分化・強化と連携、在宅医療の充実等」一点である。一体改革が描く2025年の医療・介護供給体制を見据えて、医療機関の機能分化・強化が、入院医療のみならず、在宅・外来をも巻き込んで行われる改定である。

 各医療機関にとってどのような意義があるのか、それによる地域への影響等を考えながら注目しなければならない改定である。

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