WHO事務局長がTPPに警鐘
6月10日からフィンランド・ヘルシンキで開催されたWHO主催の第8回ヘルスプロモーション世界会議で、WHO事務局長のマーガレット・チャン氏が開会のあいさつを行った。チャン氏は、非感染性疾患の取り組みには予防が最も重要であり、これを妨げている最大の要因がグローバル企業である、この規制が必要だと主張し、TPPのような自由貿易協定に危機感を表明している。一部を抜粋してご紹介する。
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非感染性疾患を予防するための取り組みは、強力な産業界の営業上の利益に反するものです。私は健康増進が直面する最大の課題の1つがここにあると考えます。
Health in All Policies(HiAP 全ての政策に健康の視点を)が明らかにしているように、もはや巨大なタバコ企業だけを相手にするわけにはいきません。公衆衛生は、巨大食品企業、巨大炭酸飲料企業、巨大アルコール飲料企業と戦わなくてはなりません。
これらの巨大企業のすべてが規制を恐れています。それを回避するために同じような策略をめぐらして保身をはかろうとしています。
(中略)
これは健康増進に対する手ごわい反対勢力です。市場を支配している力は容易に政治的な力に転化します。国民の健康を巨大企業の活動よりも優先する国は少数です。我々はタバコ産業との経験から学んだように、有害であっても巨大企業はその力を行使してなんでも市民に売ることができるのです。
(中略)
私は最近の2つの動向を深く憂慮しています。
第一は貿易協定に関することです。市民の健康を守るための措置を導入しようとする政府が裁判所に訴追されたり訴訟の危機にさらされています。これは危険です。
第二は、製品に影響を与える可能性がある公衆衛生政策と戦略に対する産業界の反対運動についてです。産業界が政策決定に関与している場合には、多くの実効的な処置が軽視されるか、完全に無視されてしまいます。これは、すでに明らかになっていることでもありますが、あまりにも危険です。
保健医療政策の策定は、商業目的または既得権益による歪みから保護されなければならないとWHOは考えています。