医療介護総合確保法、総合確保方針について(2014年9月16日厚生労働省)
TPPネットが2課題で学習
TPP京都ネットは、国内法の面からとTPP以外で進む規制緩和の面から二つの学習会を開催し、問題を浮き彫りにした。
憲法さえ書き換えられる危険性 谷弁護士が投資家の横暴阻止を訴え
8月11日の学習会では「TPPで国内法はどうなる!!—ISD条項で捻じ曲げられる私たちの生活」というテーマで、谷文彰弁護士(自由法曹団京都支部)が講演した。谷氏はTPPの本質は、関税障壁・非関税障壁の撤廃=外国企業・投資家にとっての国内規制の排除であり、それは弱い立場のものにとってはマイナスでしかないと批判。憲法を守るという観点からも締結阻止の活動を強めていく必要があると訴えた。
特に問題とされるISD条項(投資家対国家間紛争解決条項)について、韓国法務省はTPPのモデルといわれる韓米FTA(自由貿易協定)締結前に、▽租税、安保、公共秩序、保険等すべての措置について、すべての国家機関、地方自治体の措置に対して提訴が可能▽政府の法律、制度、慣行、不作為、地方自治体の条例等のいずれもが対象となりうる▽政府の政策決定に影響を及ぼすために仲裁手続を利用する、あるいは利用する構えを見せる傾向がある(政府はそれを念頭に検討しなければならない)—と分析していたにも関わらず、米国企業のロビー活動による力関係で押し切られたと紹介。
多国籍企業・投資家にとって、国内規制は邪魔者でしかない。立場や力の弱いものを保護する規制を排除し、強いものの横暴を奨励するのは安倍政権の憲法観とも一致すると批判した。
TPPのある未来においては、皆保険制度、共済制度、労働法ルールや食の安全のみならず、公契約条例、住宅改修助成制度、まちづくり条例など身近なものまで影響を受ける。賭博、大麻、覚醒剤に関するものまで変更を迫られる可能性も否定できないことを指摘。
米国では条約よりも国内法が優先するが、日本も含めた国々は条約が国内法に優先。そのため憲法さえも、外国投資家の利益を害さないよう書き換えられる可能性があると指摘した。
後戻りできない特区での規制緩和 神田氏がTiSAの危険性を解説
9月3日の学習会では「TPPとアベノミクス—何を狙うTiSA、国家戦略特区」のテーマで、神田浩史氏(NPO法人AMネット理事)が講演。神田氏はTPPとTiSA(Trade in Services Agreement 新サービス協定)で規制緩和が加速し、国家戦略特区がそれに絡む危険性を指摘し、かつて途上国を苦しめた政策がこの国に適用されないよう、途上国の経験に学ぼうと述べた。
TPPは、いまなお数多くの対立点が残っているが、11月4日の米国中間選挙と9日からの東アジアサミットの間で大筋合意される可能性があると指摘。米国事情からするとこのタイミング以外は難しいとの観測からだ。
また、TPPとは別に昨年から進められているTiSAの危険性を解説。日本を含む23の国と地域(EU28カ国含む)で、対象はモノの貿易以外何でも網羅し、極めて公共性の高いものの自由化、市場化を進めるというもの。大きな問題は、TPP同様に徹底した秘密交渉であり、現行の自由化水準を一律に凍結する「スタンドスティル条項」と、一度、自由化したものを戻せない「ラチェット条項」があること。
安倍政権の国家戦略特区によって関西圏は医療や労働分野の規制緩和の試し場とされようとしているが、それによる問題がおきて元に戻そうとしても、ラチェット条項で阻まれ、ISD条項で投資家から賠償を求められることになると、「合わせ技」の危険性を指摘した。
かつて中南米やアフリカなどにIMFが財政支援を行う際、徹底した緊縮財政、公営企業の私営化や政府補助金削減などの構造調整プログラム(SAP)という条件をおしつけた。その結果、参入した企業群は利益をあげ、みなし経済は成長するが、貧富の格差が拡大し、飢餓人口の増加など庶民の暮らしが悪化する経験を多くの途上国がした。同質の問題が私たちの社会に襲来しようとしていると警戒を呼び掛けた。
対抗策として、TPP違憲訴訟の動きがあることや国家戦略特区が一地方のみに適用される特別法は住民投票で過半数の同意を求める憲法95条に抵触するのではないかとの指摘を紹介し、さまざまな動きで阻止していく必要があると訴えた。