TPPで狙われる医療分野
批准阻止に向け協定案を分析
政府は3月8日、TPP(環太平洋経済連携協定)の承認案と関連法案を閣議決定し、国会に提出した。5月中の協定承認と法案成立が目論まれている。協定案については政府が1月に出した暫定仮訳をもとに、民間で問題分析が進んでいる。そのチームの一員である坂口正明・全国食健連事務局長を講師に、学習会「TPP協定の問題点と協定批准阻止に向けた運動」をTPP京都ネットが2月24日に開催した。
坂口氏は、「漂流」を避けるためにとりあえずの「合意」を急いだため、TPP委員会を設置し3年以内の「見直し」規定がある他、さまざまな委員会、作業部会が設置され、今後の協議に委ねる仕組みが随所にあると協定案の問題を指摘。このことから協定は深化して化けていく性格のもので、政府が「懸念はなくなった」と説明しているものも、今後嘘になっていく可能性があるとした。
医療分野では、「知的財産」について「特許期間延長制度」「新薬のデータ保護期間に係るルールの構築」「特許リンケージ制度」(後発薬承認時に有効特許を確認する仕組み)の導入により、薬価の高止まり・高騰の懸念がある。さらに、「透明性」確保により、薬価を決める審議会への海外製薬企業の意見表明ができることになったと指摘。
また、「人間・動物の治療法、検査法」は「特許から除外できる」規定になっている。医療は産業ではないので特許法の適用にならないと厚労省は説明しているが、政府は医療の産業化を進めており、いずれ解釈が変われば認められる可能性もあるとの懸念を示した。さらに、高度医療を対象とする民間保険が売り出されている場合、それが健康保険の対象とされれば、ISD条項で保険会社から提訴されかねないことや、医療特区への株式会社病院の進出の懸念などが指摘された。
規制緩和については、他国が日本政府に求めることができることになっており、それについて関係省庁が窓口を決め、コメントをつけて規制改革会議ではかることになる。これは日米並行協議の結論に明確に書かれており、他の11カ国については協定の「透明性確保」で同様の扱いになると類推されるとした。
今後については、米国の動向も大きいが、国内での批准阻止に向けて、与党国会議員に公約を思い出させる取り組みや、新しい請願署名への取り組み、地方議会への働きかけなど、夏の参院選挙に向けた運動が重要だと訴えた。