NICU必要病床数の改定を/厚労省研究班「増床策を進めるべき」
周産期医療に関する厚生労働科学研究班は、救急医療で母体搬送受け入れ困難の主因となっている「NICU満床」を解消するには、国内のNICUの必要病床数の基準を見直し、増床策を進めるべきとの検討結果をまとめた。産科医や小児科医と同様、新生児科医不足が周産期救急医療に深刻な影響を及ぼしている現状も明らかになった。横浜市内で開かれている日本周産期・新生児医学会総会で7月13日、報告された。
現在のNICUの必要病床数は、1996年に旧厚生省が周産期医療対策整備事業で提示した「2.1床/1000出生」の基準に基づくものだ。楠田聡(東京女子医大教授) 分担研究班の調査では、この基準に沿って全国のNICU病床数は2005年時点で2032床(社会保険事務局への届け出数) まで整備された。しかし、周産期(新生児) 医療は基準設定から05年までの約10年間で、低出生体重児の出生数が約30%増加し、新生児の死亡率も40%改善。NICU長期入院の症例数が増加し、2次救急対応症例が3次救急施設へ集中する事態を招いていることが分かった。このため同研究班は、NICUの必要病床数の基準を「約3床/1000出生」に改定することが必要との検討結果をまとめた。
一方、楠田研究班の杉浦正俊氏(杏林大小児科)は、全国新生児医療施設126施設を対象に新生児医療提供の充足度を調査。それによると、過去1年間に母体搬送を受けられなかった経験を持つ施設は88%。新生児搬送を受けられなかった経験があるのは71%の施設と高率で、受けられなかった理由としては、「NICU満床」が82%に上った。
NICU増床への障害について医師の確保を挙げた施設が79%、看護師の確保が75%だった。杉浦氏は「新生児科医不足がすでに日常の新生児医療に深刻な影を落としている」と話した。
さらに、NICU専門医数が人口100万人当たりで多い県ほど新生児死亡率が低いとの調査結果も示され、新生児科医の数によって救命される幼い命の数に差異が出ている厳しい現実が報告された。(7/15MEDIFAXより)