7・10シンポジウムに参加して  PDF

7・10シンポジウムに参加して

「3・11」を構造改革との訣別の日に!!

 東日本大震災後、4カ月を経た7月10日に「3・11後の日本で福祉国家を展望する―社会保障基本法・憲章の提起を通じて―」というシンポジウムが東京で開催された。

 本来希弱だった日本の社会保障が、「構造改革」で、さらに壊されてきた。シンポジウムは、憲法25条に力を持たせるために社会保障基本法・憲章を提起し、これらを大きな武器とし、「構造改革」で壊された日本を福祉国家へ再生させることを目的にしている。

 そして、東日本大震災は未曽有の災害であるが、「被害がなぜこのように大きくなったか?」「原発事故はなぜ起こったのか?」を、「構造改革」の合併症として捉えて検証された。

 「構造改革」で市町村の力を奪われてきた中での大震災。震災後に十分な対応ができるはずがない。

 東日本大震災復興構想会議では、市町村主体の復興としているが、国が決めた方針を市町村に責任を持って復興させるとしている。これは逆ではないだろうか?

 被災者にとって一番近い市町村が主体となり復興の方針を決め、それに対して国が責任をもって支援する。これが本来の姿であろう。

 また、復興構想会議の構想には、「被災地の復興なくして日本経済の再生はない。日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す」としている。産業・経済の復興以前に、被災者一人ひとりの復興が必要で、被災者自身が関わり、作り上げる復興でなければならない。

 原発事故問題では、これまでのエネルギー政策は経済成長を維持・発展させるのが目的で、オイルショック後、安定したエネルギー確保、経済成長の維持に原発中心のエネルギー政策へと移ってきた。原子力という人間の力では制御不能なエネルギーを、十分な安全性が確立していない原発で使用する。原発肯定のために「安全神話」を生み、いつの間にか本当に安全であると信じてしまったのではないか。

 結論ありきで一方的に政策を進めるのではなく、将来のエネルギー問題・政策を、しっかり議論できる環境を作ることが必要だ。

 今回の東日本大震災を通して、今まで見えていなかった「構造改革」の問題点が明らかにされた。シンポジウムには、多くの人が参加した。私たち同様、どの分野も様々な問題を提起し、運動している。その根底にあるのは「構造改革」にあることは確かである。

 提起された社会保障基本法・憲章によって、私たちは共通の大きな武器を持つことができた。この武器を広め、大きな波にし、その武器でどう戦うか、私たちは考えていかなければならない。一つ確かなことは、皆がばらばらではなく、この共通の武器を持って一つになっていかなければならないことだ。

 3・11東日本大震災は忘れられることがない日になるであろう。そして、「3・11」はこれまでの「構造改革」路線から大きく転換し、福祉国家へと日本が再生していく意味のある日にしていく責任がある。

(理事・渡邉賢治)

ページの先頭へ