2025年の医療・介護の在り方提言/全日病「病院のあり方」報告  PDF

2025年の医療・介護の在り方提言/全日病「病院のあり方」報告

 全日本病院協会の「病院のあり方に関する報告書2011年版」がまとまった。同報告書の作成は今回で6回目。11年版のテーマは「高齢社会がピークに達する25年の日本における医療介護提供のあり方」で、医療・介護の直近の情勢にとらわれずに「社会構造の変化や経済の将来見通しも踏まえた現実的な対応と、理想的な医療提供の姿」を検討した。取り上げたテーマは「医療圏」「医療の質」など8つ。今回初めて「産業としての医療」も取り上げた。「医療基本法」についても触れ、あらためて同法の制定を求めている。6月4日に開く総会で公表する。

 報告書は「総論」で、25年の医療・介護の提供に影響する主な変化として「人口減少・少子高齢化」「短・長期の入院患者の大幅増加」を挙げた上で、社会保障費・医療費の伸びに対する財源の確保と、専門職不足が大きな懸念材料になると指摘。急性期医療の提供について「社会保障国民会議のB3シナリオのような集約化が求められる」としたが、同時に慢性期疾患管理では▽かかりつけ医機能の徹底▽医師などによる定期巡回制度の導入─などを揚げ、救命救急では医療圏を越えた協調・協同の仕組みなどを求めている。

 医療・介護施設の機能分化と集約化・連携については「国民の責務」と表現。国民に健康管理や健診受診などを求めた。

 公的財源が限られた場合には「保険診療の範囲」が議論になるとし、「最先端医療」「超高齢者」に対する医療提供の在り方を検討した上で「一定程度の制限」も必要とした。

 医療圏については、基本的には「日常生活圏」で考えることを提案。▽大都市部▽その周辺の衛星都市▽人口密度が低く広域医療が必要な地域─に分け「集約化・連携」を進め、郡部・へき地などでは「中核病院の充実と周辺医療機関との連携体制確立」「受診を容易にする交通手段」などを確保すべきとしている。

 産業としての医療では、医療が疾病予防・治療を通じて「労働人口増に貢献」してきたと指摘。社会のセーフティーネットとして、医療費の伸びは容認しなければならないとした。「医療の質」「医療情報システム」では、病院の取り組みの中で質の担保とICTは必須のものになるとした。

 東日本大震災が発生したことを考慮し大胆な提言は控えたとしており、今後の社会保障と税の一体改革の行方などを見極めて、11年度後半にはさらに踏み込んだ提言を再度行うとした。(6/3MEDIFAXより)

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