10月から社会保険事務局が業務移管
指定・登録、調査・指導はどうなる?
08年10月、社会保険庁が廃止され、(1)全国健康保険協会、(2)地方厚生局、(3)日本年金機構(10年1月より)―にそれぞれ業務移管される(図1、2)。
現在、都道府県社会保険事務局で行われている、保険医療機関等に対する指導監査、保険医療機関等の指定、保険医等の登録、施設基準等の届出受理等の業務は、08年10月1日から厚生労働省の地方厚生局へ移管される(図3)。
近畿厚生局管内には、近畿6府県に加え福井県が含まれる。近畿厚生局内に指導部門として、管理課、福祉指導課、医療指導課、特別指導課、指導監査課が設置される(図4)。
各県(地方厚生局の置かれている道府県以外)の対応窓口としては都府県事務所が置かれる。10月1日以降、宛名はすべて「地方厚生(支)局長」となるが、申請・届出書の提出先は、地方厚生局都府県事務所となる。京都においては、京都事務所(仮称)が置かれる。住所・連絡先は図2の通り。なお、地方厚生局が所在する道府県(近畿は大阪)では、本局の「指導監査課」で直接業務が行われる。指導監査とは関係ない業務で訪れる保険医にとっては、名称だけで圧力を感じることになりかねない。
また従来、保険医療機関等の指定及び取消し、保険医等の取消しについては、都道府県単位で設置されていた、地方社会保険医療協議会(地方協議会)で審議されてきた。しかし10月以降、地方協議会は厚生局所在地に設置される総会と、都府県事務所所在地に設置される部会に分かれ、取消事案等は総会で審議される。
なお、従来は個別指導等の選定委員会は各地方社会保険事務局に設置されてきたが、10月以降も、地方厚生局単位ではなく、「都府県事務所(仮称)」単位となる予定だ。「年間指導計画書」も「都府県事務所(仮称)」単位で出されるという(保団連聴取による)。
狙われる個別指導の3倍化 業務移管がどう影響?
現在までに分かっている情報だけを読めば、事務手続きのみの変化に留まるようにも思える。しかし、07年6月19日に閣議決定された「経済財政改革の基本方針2007」では、当時の柳澤厚労大臣が作成した「医療・介護サービスの質向上・効率化プログラム」を、08年度から12年度の5年間を基本に推進するとしており、その中では、「保険医療機関等の指導・監査を更に強化」するとして、「個別指導の数を毎年8000カ所を目指す」としている。この数は現在のほぼ3倍にあたる件数である。
各都道府県で取り扱いに差が存在する、施設基準等適時調査、指導等の取り扱いが、地方厚生局管轄になることによって、どうなるのか。指導・監査の不当な強化につながらないか等、注視していく必要がある。
政管健保は「協会けんぽ」へ 被保険者証は順次切り替え
一方、現在、社会保険庁が運営している政府管掌健康保険(政管健保)は、08年10月1日から、全国健康保険協会が保険者となり、国から切り離された非公務員型の公法人として運営される。京都支部の住所・連絡先は(図2)の通り。
政管健保は「全国健康保険協会管掌健康保険」(愛称「協会けんぽ」)に制度「改革」される。従来、政管健保に加入していた人には、順次、新たな被保険者証等への切り替えが行われるが、切り替えが完了するまで現在の被保険者証等が使用できる。10月1日以降に新たに「協会けんぽ」に加入した人には、新たな被保険者証が発行される。
保険給付の内容は変わらない、とされているが、保険料には変更がある。保険料率は従来、全国一本となっていたが、「協会けんぽ」では都道府県毎に年齢構成や所得水準の違いが調整された上で、地域の医療費を反映した保険料率が設定される。厚労省資料「都道府県単位保険料率の機械的試算(03年度)」によれば、「若人医療費給付費分調整後の保険料率」+「全国一律で賦課される後期高齢者医療拠出金等に要する保険料率(39‰)」最終的な保険料率の全国平均は82‰だが、最も低い長野県は76‰、最も高い北海道は87‰で、11‰もの格差がある。
ただし、08年10月1日から1年以内に都道府県単位保険料率を決定するものとし、それまでの間は従来の政管健保の保険料率が適用される。
【京都保険医新聞第2656号_2008年9月15日_1・2面】