1病院8カ月分330万円超の減収 他医療機関受診による入院料減算の影響
入院中の患者の他医療機関受診の取扱いについては、2010年4月診療報酬改定で規制が強化され、(1)これまで規制のなかった入院基本料等算定患者についても入院料の減算を行い、他医療機関で算定できる範囲に制限を設ける、(2)処方は入院医療機関で行うことを原則とする―などが実行された。
入院料減算根拠はない
このうち、入院料の減算については、保険医協会が実施した府内の療養病棟を持つ病院に対して実施したアンケート調査(京都保険医新聞第2750号、10年7月5日)や、近畿二府四県の精神病床を中心に持つ病院を対象にしたアンケート調査(同第2764号、10年10月20日)の結果から、その減算割合の根拠が不明なこと、外来で必要となる診療費の実態に相応していないことなどを明らかにした。今回、入院料減算の影響額について、府内のある病院に依頼し、その額の概算を算出してもらったところ、非常に大きな額になっていることが明らかとなった。
影響額を算出
当該病院は、病床約500床の規模で、出来高病棟と包括病棟とが混在している。改定が実施された10年4月から11月末日までの8カ月間、入院中に他医療機関受診が必要となった患者数は、延べ689人。1日平均3人近い患者が他医療機関受診を必要としたことになる。
入院料30%ないし70%減算となったもの(延べ544人)についてはその額を、他医療機関受診の結果、外来診療費を合議で精算(入院側が外来側に外来診療費を全額支払い=持ち出し)したもの(延べ145人)を便宜上、入院料50%減算として額を算出した(当該病院で合議による精算例を確認し、およそ入院料の50%に相当すると考えられたため)ところ、これらの合計額は、なんと33万9141点、つまり、300万円を超える額となった。これは8カ月間の数字であるため、同じペースで推移したと考えると、1年間で、500万円を超える額に達することになる。
新たに発生した薬剤費も
他医療機関受診の結果、投与が必要と診断された薬剤について、専門外等の理由により、自院に在庫がなく新たに購入したもの、購入したが当該患者が退院し不要となったため廃棄した薬剤、これらも当該病院の持ち出しとなるため、他医療機関受診の規制強化による影響額が、実際にはさらに膨れ上がるという。
高額に膨れた影響額
年間500万円超に達するという影響額は、非常に高額である。さらに、他医療機関受診の規制強化によってもたらされた、他医療機関との調整や関係書類の作成業務など、事務量の増加を勘案すると、示された影響額以上の負担が、入院側へのしかかっていることが容易に想像できる。
入院料減算規定は廃止を
入院料減算について、未だ、厚生労働省側は明確な根拠を示していない。これほど病院の経営に多大な影響をもたらしている、入院中の他医療機関受診の取扱いの規制強化。厚生労働省側が、その根拠を示すことができないのであれば、入院料の減算規定を、即刻廃止すべきである。
入院料の減算等について、当該医療機関以外からもぜひ、積極的な情報提供をお願いしたい。