高齢者の在宅生活を優先/2025年の地域包括ケア
医療・介護・福祉の一体的な提供について検討する有識者研究会「地域包括ケア研究会」(座長=田中滋・慶応大大学院教授)はこのほど、2009年度老人保健健康増進等事業の報告書をまとめた。団塊の世代が75歳以上となり、高齢化が最も進む25年の「地域包括ケアシステム」の在り方を描いた。高齢者が在宅で生活を続けることのできる環境整備を目指し「施設は、在宅での生活が困難になった場合に初めて利用する」という原則に基づいた体制整備の推進を提言している。
●介護施設は「リハを重点配置」か「集合住宅」へ
報告書は、生活の場からおおむね30分以内に医療や介護、福祉サービスなどに到達でき、高齢者が病院などに依存せず住み慣れた地域で生活を続けることができる25年の「地域包括ケアシステム」を描いた。医療と介護の機能分化が進み、入院した高齢者は、急性期から回復期までの充実した治療やリハビリテーションを受けることができる体制を想定。在宅復帰に向けて生活期のリハビリが集中的に必要な高齢者には、リハビリスタッフを重点配置した施設が整備されている姿も示した。
一方、このような機能を持たない従来型の介護保険施設は、「見守り」や「生活支援サービス」を提供する「ケアが組み合わされた集合住宅」と位置付け、医療や介護サービスは原則として「外付け」で提供するという。
24時間短時間巡回型の訪問看護・介護サービスの導入も提案。夜間通報に対応する緊急訪問などを組み合わせることで、高齢者の在宅生活を24時間365日支えるとした。
ただ、介護保険施設の類型の再編には▽既存施設をどう位置付けるか▽既存施設の建て替え時にどのような機能を付与するよう政策誘導すべきか▽新規の建設にどう対応するか―などを考慮し、段階的に改革を進める必要があると指摘。まずは次期事業計画期間を目途に、施設類型にかかわらず、外部から医療サービスを提供できる体制構築などに取りかかることを提案した。
●訪問看護は自立して医療提供を
報告書では「地域包括ケアシステム」を支える人材の在り方にも言及。医療の機能強化を図る観点から、医師や看護師は急性期医療機関に重点的に配置する。訪問看護では、看護師がより自立的に医療に携われるようになるとした。
要介護者に対する基礎的な医療的ケアについては、医師や看護師との連携の下、介護に関する国家資格を持つ介護福祉士などが実施するとした。(5/25MEDIFAXより)