骨太方針 医師の偏在対策検討を明記
「規制的手法」は書き込まず
政府は6月2日、「骨太方針2016」(経済財政運営と改革の基本方針2016)を閣議決定した。「1億総活躍プラン」や成長戦略(日本再興戦略2016)、「規制改革実施計画」も同時に決定。「1億総活躍」に向けて、「GDP600兆円」「希望出生率1・8」「介護離職ゼロ」という三つの目標も掲げた。
前日に安倍首相が示した消費税率10%への引き上げ再延期(19年10月)方針を受けて、「2020年度の基礎的財政収支黒字化の財政健全化目標を堅持する」と明記したが具体的な財源は書き込まれていない。社会保障については、「経済・財政再生計画」に掲げた患者負担増計画など44の改革項目を実行するとした。
医療分野では、(1)医療費適正化計画の策定、地域医療構想の策定等による取り組み推進(2)医療費の増加要因や地域差のさらなる分析、医療・介護データを連結した分析(3)データヘルスの強化(4)健康づくり・疾病予防・重症化予防等の取り組み推進(5)人生の最終段階における医療のあり方—の5項目を打ち出した。
医療従事者の需給見通し、地域偏在対策について16年内に取りまとめを行い、特に医師については、「実効性のある地域偏在・診療科偏在対策を検討する」と明記。素案の「規制的手法も含めた」という文言は「実効性のある」に修正されている。
このほか(1)では、医療費の地域差の半減に向け、「地域医療構想に基づく病床機能の分化及び連携の推進の成果等を反映させる入院医療費の具体的な推計方法」や、「医療費適正化の取り組みと効果に関する分析を踏まえた入院外医療費の具体的な推計方法」、「医療費適正化の具体的な取り組み内容」を16年夏頃までに示すとしている。
さらに、医療費適正化計画では、後発医薬品の使用割合80%以上に向けた使用促進策を記載するとともに、「重複投薬の是正に関する目標」「たばこ対策に関する目標」「予防接種の普及啓発施策の目標」を設定。
医薬品の適正使用のため、「複数種類の医薬品処方の適正化の取り組み」を実施。費用対効果評価の導入と併せて革新的医薬品等の使用の最適化推進を図り、「生活習慣病治療薬等の処方のあり方」などを16年度から検討して17年度中に結論を得る。また、介護療養病床等の効率的なサービス提供体制への転換は、16年末までに結論を得る。
(2)では、医療費の増加要因や診療行為の地域差などの分析を進め、医療保険者によるレセプト等分析による医療の実態把握等を行い、質の改善につながる仕組みを検討。
看取りや審査で規制改革
「規制改革実施計画」では、在宅での看取りの規制見直しや診療報酬の審査の効率化と統一性の確保などを重点事項に掲げた。
在宅での看取りについては、受診後24時間を経過しても、一定要件を満たす場合、医師が対面で死後診察によらず死亡診断を行い、死亡診断書を交付できるように規制を見直す。16年度に検討を開始し、17年度に結論を得て措置を講じるとした。
診療報酬の審査については、現在の支払基金を前提とした組織・体制の見直しではなく、診療報酬の審査のあり方をゼロベースで見直し、検討組織を設置し16年内に結論を得る。審査へのICTの最大限活用と業務の効率化等のために、医師の関与の下で全国統一の判断基準を作成し、コンピュータチェックの実施を可能とすることなどを検討し16年内に結論を得るとした。