附属病院廃止の撤回を 京都市におけるリハビリテーション行政の基本方針(案)への意見
京都市民の医療を預かる専門職の団体として、「京都市におけるリハビリテーション行政の基本方針(案)」について意見を述べます。
基本方針(案)を読んだ上で、あらためて私たちが求めるのは次の点です。
一、京都市は、基本方針(案)に示された京都市身体障害者リハビリテーションセンター(市リハセン)「附属病院の廃止」方針を撤回すること
二、京都市は、私たちの指摘し続けている、附属病院廃止に伴う懸念事項についての、解決策を早急に示すこと
(1) 現在入院されている患者はもちろん、将来にわたり、行き場をなくす患者の受け皿を誰が担うのか
(2) 医療機能の拠点を失くして、障害種別を超えた相談窓口や、高次脳機能障害者のための障害福祉サービス、人材育成等の機能を具体的にどうやって担うつもりなのか
市がリハビリテーション黎明期の1978年6月に市リハセンを開設したことは画期的でした。
開設に向け、4千万円を超える市民の寄付、市内企業からも3億円を超える「空前の募金」があったとお聞きしています。市リハセンは、市民の願いや期待が込められた宝物です。
附属病院をなぜ廃止せねばならないのか、方針(案)を読んでも全然理解できません。方針(案)は「新たなセンターへの再編成」を打ち出して、総合相談窓口の設置(そこで医学的専門相談機能の充実も謳っている)や、高次脳機能障害に特化した支援の充実や人材育成策の強化等、市民ニーズに応える考えが盛り込まれています。しかしそのことと附属病院廃止は何の関係があるのですか? 医療機能拠点をなくして、そのようなことができるはずはありません。
確かに昨今、京都市でも回復期病棟を持つ民間病院が増加しました。方針(案)にも「多くの方が民間病院でのリハビリ終了後、在宅に移行できるようになった」とあります。しかし、今日、市リハセン附属病院に回復期を過ぎてなお、リハビリを必要とする患者さんたちが多数転院していることも事実です。診療報酬上の日数制限は、たかだか制度上の問題にすぎず、個別の患者さんの状態は制度の枠組みにあわせて推移するわけではありません。大切なのは必要なリハビリの確実な保障であり、国の制度がそれを実現できないなら、その保障は地方自治体の当然の役割です。対象がたとえ少数であっても、その役割の無視・軽視は棄民政策のそしりを免れません。ましてやそこに「京プラン」に示されたような「財政リストラ」の意図があるとすれば、論外です。
さて、私たちはこれまでに同様の趣旨で、幾度も意見表明してきました。京都市はまじめに市民の意見を検討するつもりがあるのですか? 今回の方針(案)のベースである京都市社会福祉審議会答申も、とりまとめを委ねられた分科会・審議会の席上、複数の委員が専門的な立場から指摘したことを、ほとんど無視して取りまとめられたものです。そもそも、分科会委員にはリハセンの患者さんなど直接の当事者さえ皆無でした。
京都市が真面目に、市民のリハビリ保障拡充に向けた施策を検討しているのなら、到底提案できないはずの内容が、今回の基本方針(案)には盛り込まれています。もう一度、地方自治体の役割、公務に携わる者の役割の原点に立って、再検討されることを望みます。
2013年8月23日 京都府保険医協会 理事長 垣田さち子