開業考える医師に実践的アドバイス
新規開業予定者のための講習会開く
新規開業を考えている勤務医を対象として、協会は5月19日に新規開業予定者のための講習会を開催した。共催は有限会社アミス。講習会は、1. 始めが肝心!スタッフ雇用の留意点、2. 先輩開業医からのアドバイス―の2題。講習終了後に山田理事から、地区医師会入会の留意点、協会共済制度の紹介や活用方法を説明した。講習会の概要は以下の通り。
始めが肝心! スタッフ雇用の留意点
第1講では、?ひろせ総研特定社会保険労務士の河原義徳氏から、開業する上での重要事項である?開業時の採用活動、?特に知っておくべき労務管理の基礎知識―の2点を中心に解説した。
スタッフの採用にあたって大切なことは、経営方針・理念を明確にした上で、その方針に沿った人選を行うこと。面接時は雇用前であり、身だしなみなど、法律上規制しづらい事項を伝えておくことも必要。雇用者には労働条件通知書を作成し、労働条件を明確にすることで、労使双方の共通認識とする。労使トラブルの原因となる見解の相違は、共通認識があれば回避できる。そのためには、『医院経営と雇用管理』(全国保険医団体連合会発行)の労働条件通知書の雛型が参考になると紹介した。
続いて、労務管理の基礎知識として、試用期間の考え方について解説。試用期間中でも自由な解雇はできない。本採用に不安が残る場合、試用期間を延長し、雇用者の問題点を指摘した上で、改善を求め、機会を与えることが大切だとした。
また、雇用とは、憲法25条「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」に立脚した行為であり、生活の糧(給与)を奪う解雇は簡単に許されないことを念頭に入れておくことが必要と強調。
有給休暇は法律上、常勤・非常勤の別なく付与することが定められており、給与と調整の上で付与する方が無難である。
このように労使関係は法律を遵守することで、安心してスタッフが働ける。さらに安心・安全な医療を患者さんに提供できる環境を作ることができると締めくくった。
スタッフ雇用の留意点講習状況
基幹病院外来に匹敵するクリニックを目指して
第2講は、医療法人社団小畑内科クリニック院長の小畑寛純氏より、自己紹介ののち、なぜ開業する気になったのか、開業するにあたって考えたこと、開業してわかったことについてアドバイスを行った。
開業を考えるようになったのは、基幹病院の勤務に体力的限界を感じていたこと、管理職業務に嫌気がさしてきたこと、家庭の事情などが要因になった。
開業するにあたっては、基幹病院外来に匹敵する診療内容を担保したい、得意分野である炎症性腸疾患の診療をしたい、勤務医時代の地盤や人脈を生かしたいと考えたことを述べた。また、開業するならJRか阪急の駅近くでと思ったが、都合の良い場所が見つからず、開業計画は一旦白紙になった。その2カ月後にコンサル会社から物件の案内があり、ニーズに適合したので、物件案内から2カ月後には契約が完了し、7月から動き始め、12月1日に開院するに至った。
開業してわかったことは、個人事業主は雇用保険に入れないし簡単には休診できない、勤務医の時より雑務が多い、優秀な職員の確保が難しいということであった。
最後に、アドバイスとして、開業を決める前にはクリニックのビジネスモデルを構築し、シミュレーションすることと場所選定が何より重要。都心での落下傘開業は簡単ではない、診療報酬の仕組みに精通すること、医業に詳しい税理士を探すこと、職員は原則、前職場の同僚でないほうが良い。ホームページは必ず持つこと、そして、自分の健康には十分配慮することと締めくくった。
小畑寛純 氏