開業支援は協会にお任せを! 開業のポイントを事例もとに解説  PDF

開業支援は協会にお任せを! 開業のポイントを事例もとに解説

 
 新規開業を考えている勤務医を対象に、協会は「新規開業予定者のための講習会」を10月27日に開催した。共催は有限会社アミス、協賛は株式会社ビー・エム・エル。第1講目は、「開業を成功に導くための秘訣〜押さえておくべきポイント〜」を税理士の廣井増生氏が講演。第2講目は、なかい耳鼻咽喉科院長の中井茂氏より先輩開業医からのアドバイスとして開業時の経験談を話していただいた。
 
開業を成功に導くために
 
 第1講目は、これまで開業支援を行ってきた事例を参考に、廣井氏より開業するまでの決断、決断してからの実際の準備、それに要する期間、資金調達方法、医療機器の選定、標榜科目や医院名称の付け方、広告方法、スタッフの募集方法や採用、開業後の経営分析数値など多岐にわたる内容を解説。また、開業後、医療法人に移行する際の注意点を説明した。
 
未来予測も重要
 
 廣井氏は、開業を決断したら、借入金の返済期間を少しでも長く確保するため、1年でも早く開業したほうがうよい。ショッピングモール内での開業を考える場合は、10年後モールがどうなっているのかも含め検討することが必要で、通勤時間は自宅から最大でも30分程度が適当とした。
 医療機器の選定は予算超過しがちだが、過大な投資は避けた方がよい。逆に、電話帳代わりとして使われるホームページの作成は必須で、開業初年度は広告宣伝に関する予算を多く配分したほうがよいとした。また、経験のあるスタッフを雇用する場合、協調性の有無が重要であると解説した。
 勤務を続けながら並行して開業準備を進める場合については、最後の2カ月前にしか決められないことが多く、また、コンサルタントが入っていても、最後は自分自身が動かないと確定しないことが多数あるため、退職時期は開業予定日の1カ月半から2カ月前くらいが望ましい。開業直前の多忙さを甘く見てはいけないと注意喚起した。
 
早期の法人化は慎重に
 
 また最近、開業後1〜2年で医療法人化を勧められるケースもあるようだが、メリットだけでなくデメリットもきちんと理解しておく必要がある。また、収益力の高い法人に利益が残るからといって、理事長報酬を高額に設定しても、法人と個人が支払う税金を合計すると節税にならない。役員報酬額だけでは子どもの学費や住宅ローンの支払いに困るような事態になることもあるなど、個人の必要資金の確保が最も重要であると説明した。
 最後に、開業が成功しても、家族の理解がえられず関係が崩壊するようでは開業が成功したとは言えないとした。
 
経験談もとに開業アドバイス
 
 第2講は、先輩開業医からのアドバイス。なかい耳鼻咽喉科院長の中井茂氏が、自身の経験を振り返って、開業するにあたってこだわった診療コンセプト、開業地選定のポイント、ホームページの活用方法、開業してから明らかになってきた課題などについて話した。
 
診療方針にこだわる
 
 こだわった診療コンセプトは、受診してよかったと思ってもらえる診療、子どもに安心して受診してもらえる診療、耳鼻科の専門性を生かした診療を目指している。そのためには、患者すべてに丁寧な診察を行い、電子内視鏡などの機器を活用して、見えにくい耳・鼻・喉の所見を見せて理解しやすい丁寧な説明を心がけている。また、個室化してプライバシー保護に留意しているとした。
 開業地の選定では、駅に近く、駐車場が確保でき患者数がみこめる場所、特に小児耳鼻咽喉科に力を入れたかったので、乳幼児の受診が見込める場所にこだわった。アクセスがよい場所はテナント料の問題もあるが、前勤務地の患者が継続して受診してもらいやすいこと。自分が長時間働きたいと思える場所ということも重要視したと述べた。
 さらに自分の生活圏であることも大事で、通勤の負担が少なくなり、幼稚園や小学校の近くだとクリニックを認知してもらうのに有利になる。これらの条件に合致し、納得できる物件が見つかるまで多数見学したと経験を語った。
 医療機器の導入は、乳幼児の難治性中耳炎など力を入れたい診療などに必要不可欠な医療機器もあるので、使用頻度などを十分考慮して、最初は必要最小限導入し、患者のニーズに応じて導入していくとよい。
 
SNSで情報発信
 
 集患対策では、開業時に近隣の医療機関、幼稚園・保育園・小学校の保健室にあいさつを行った。また、医院情報をホームページ、ブログ、フェイスブックで患者さんに発信。発信する情報を、患者の立場から家族に確認してもらうということも行っている。地区医師会行事には参加し、他領域の勉強会にも参加する。近隣病院で乳児の耳鼻科疾患に関する講演会活動などを行っているなど、積極的な取り組みを紹介し、今後の課題は待ち時間の短縮、スタッフの人材確保、時代のニーズに合わせて日帰り手術など診療内容を発展させることが必要だと締めくくった。

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